「もしかして私、嫌われてる?」とつい思ってしまう人へ精神科医が伝えたい言葉
春は何かと環境の変化が起こる時期。異動や転職、引越し、子どもの進級・進学などで慌ただしい日々を送っている人も多いはず。 【マンガ】自分に自信が持てない…自己否定の沼からの脱出日記 そんな時こそ大事なのは「変わらなきゃ」と焦らずに自分らしく生きること。そう話すのは、精神科医の藤野智哉先生。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける藤野先生は、読者に寄り添うような優しい語り口がテレビやSNSで人気だ。 そんな藤野先生に、新しい環境に「早く慣れなきゃ」「がんばらなきゃ」と思ってしまいがちな人に一番伝えたい言葉を新刊『「そのままの自分」を生きてみる』から抜粋してお届けする。 その第1回は「もしかして私嫌われてる?」と思う人へのメッセージ。 ●プロフィール 藤野智哉(ふじの・ともや) 精神科医。産業医。公認心理師。 1991年愛知県生まれ。秋田大学医学部卒業。幼少期に罹患した川崎病が原因で、心臓に冠動脈瘤という障害が残り、現在も治療を続ける。 学生時代から激しい運動を制限されるなどの葛藤と闘うなかで、医者の道を志す。 精神鑑定などの司法精神医学分野にも興味を持ち、現在は精神神経科勤務のかたわら、医療刑務所の医師としても勤務。 障害とともに生きることで学んできた考え方と、精神科医としての知見を発信しており、X(旧ツイッター)フォロワー9万人。 「世界一受けたい授業」や「ノンストップ サミットコーナー」などメディアへの出演も多数。著書に3.5万部突破の『「誰かのため」に生きすぎない』(ディスカヴァー)『自分を幸せにする「いい加減」の処方せん』(ワニブックス)、『精神科医が教える 生きるのがラクになる脱力レッスン』(三笠書房)など。最新刊『「そのままの自分」を生きてみる』(ディスカヴァー)が2024年4月19日発売に。
「同じものを見ているようで、見えているものは一人ひとり違う。」
たとえば、友だちとのグループLINEの返事が翌日になってもこない場合、あなたはどう思いますか? 1「LINEはすぐ返すべき」とムカつく 2「あれ私、嫌われてる?」と不安になる 3「忙しいのかな」と何も気にならない いろんなパターンがありますよね。 こんなふうに、同じ出来事があったとしても「どう受けとるか」「どう感じるか」は人によって違います。同じものを見ているようで、見えているものは一人ひとり違うのです。 では、なぜ見え方が違ってしまうのでしょうか? これには、「スキーマ」がかかわっています。 スキーマとは、考え方や受けとり方にかかわる自分の心のクセのようなものです。「自分自身や世界を根底のところでどう思っているか」みたいな潜在的な考え方のようなものともいえます。 スキーマには「自分は誰からも愛されない」といった自身に関するものだけでなく「世の中は汚い」のように世界に関するとらえ方などもあります。人は、この「自分独自のスキーマ」を通して、出来事や事実をジャッジしたり、感情を抱いたりするのです。 例えば、同じSNSの投稿を見たとしても、人それぞれのスキーマを通して見たり感じたりするので、人によっては「楽しそう」と感じたり、「幸せを見せつけられている」と感じたりします。 このスキーマが、自分の考えや受けとり方、感情に影響を与えます。 冒頭のケースで、とっさに「嫌われてる?」と頭に浮かんでしまいがちな人は、実は根底に「私は愛されない人間」というスキーマがあったりします。 つまり「私は愛されない人間」というスキーマがあると、単なる「LINEがこない」という出来事を、「私は嫌われている」と自動的に結びつけて考えやすくなるのです。 歪んだフィルターを通して目の前の出来事を見てしまうような感じです。 「私は愛されない人間」というフィルターを通して、「LINEがこない」という出来事をジャッジする。だから「嫌われている」と自動的に結びつけてしまう。