残間里江子73歳「すべては自分の責任なんだと生きていれば、何とかご機嫌でいられる。ゆっくり、ヨタヨタでも、人生を自分のペースで黙々と歩いて」
◆生き方を肯定すれば自ずとご機嫌になる 吉永 専業主婦の友達に、「あなたは自由でいいわね」なんて言われるんだけど、自由も容易ではないしね。 残間 自分の選んだ道なのに、できなかったことを見つめてしまうと不幸になってしまう。 吉永 どの道を生きるにしても、その時の状況のせいであの道を選べなかった、と考えるより、自分の意思で違う道を選んだ、と考えるほうが、自分のことを肯定できるんじゃないかな。できなかったことではなく、できたことがその先を生きる力になるんだと思う。 残間 自分の考えを持って、つまり精神的に自立していることが重要なのよ。何でも人任せではどこまでも不安だし、うまくいかなかった時に誰かのせいにしている限り、不機嫌な人生になってしまう。 逆に言うと、すべては自分の責任なんだと生きていれば、何とかご機嫌でいられるってことなんだけど。 吉永 気分なんて、思い込み一つで変わるって気もする。たとえば私は朝、起きた時に「あーしんどい」ってため息をつくと一日中ドンヨリしちゃう。だから、「今日は元気だぞ!」とか言うようにしてるんだけど。
残間 私の朝の儀式は仏壇に手を合わせること。うっかり忘れると一日中気分が冴えないの。 吉永 それぞれ儀式があるのね(笑)。でもさぁ、思うに、必ずしもご機嫌である必要もないんじゃない? 残間 無理は禁物だとは私も思う。 吉永 人って基本的にネガティブ思考に陥りやすいのは、誕生と同時に死に向かっているからだと思う。哀しみをたたえてるのが自然な姿。暗部を見ないで明るくいなきゃというのは危うい気がする。暗部を見つつ、それでも明るく生きたいんだよね。 残間 最悪のことを想定して、何が起きても対処できる気構えを持ってこそ、ポジティブになれるのではないかしら。 吉永 私の座右の銘は「丙(へい)を丙とすれば丙ならず」。良くないことも潔く受け入れてしまえばなんてこともない、ということで、ある意味究極の癒やしかもしれないね。 残間 私は、母が雑記帳に書き残していた「私は歩く」という言葉が好きなの。ゆっくりでも、ヨタヨタしていても、人生を自分のペースで黙々と歩いていくのが理想的だなと思って。 吉永 素晴らしい人生訓だね。最後はみんな一人なのよ。でも寂しいのは自分だけじゃないと悟って、とにかく歩んでいこうと決めれば、心は安泰でいられる。そうありたいね。 (構成=丸山あかね、撮影=藤澤靖子)
残間里江子,吉永みち子