F1、WECでトヨタを長年支えたパスカル・バセロンがテクニカルディレクターを退任。TGR-Eには引き続き所属へ
ドイツ・ケルンに拠点を置き、WEC(世界耐久選手権)プログラムやWRC(世界ラリー選手権)用GRヤリスのエンジン開発などを行なうTOYOTA GAZOO Racing ヨーロッパ(TGR-E)。そこで長年テクニカルディレクターを務めてきたパスカル・バセロンが同職を退き、後任にデビッド・フローリーが暫定的に就任することとなった。 【ギャラリー】F1史上最も醜い、2014年のF1マシン全車 TGR-Eから発表された短い声明には、今回の人事は「継続的な改善と、モータースポーツを起点としたもっと良いクルマづくりへの取り組みの一環として、次世代のリーダーを育成するため」だとしている。 またバセロンは「日常業務における役割は一時休止」するものの、かつてのTMGとして知られるTGR-Eに引き続き在籍するという。その上で、バセロンが「グローバルモータースポーツにおけるTGRの戦略的アプローチを強化するため、近いうちに新たな役割に従事してその経験や知識で貢献する」とのことだ。 ミシュラン出身のバセロンは2005年にトヨタに加入。当時トヨタが参戦していたF1のプロジェクトに関わった。当初はシャシーの研究開発を率いていたが、2006年にマイク・ガスコインに代わってテクニカルディレクターに就任した。 その後トヨタは2009年を最後にF1から撤退するが、2012年からWECの最高峰クラスに参戦。そこでもバセロンはテクニカルディレクターとして手腕を振るい、ル・マン24時間で5度の優勝、ドライバーズ、マニュファクチャラーズのダブルタイトルを5度獲得するなど輝かしい実績を残した。 トヨタは昨年、将来的にル・マン24時間レースで水素エンジン車の参戦が認められることを受け、水素エンジンプロトタイプカーのコンセプトモデル『GR H2 Racing Concept』を発表した。バセロンは、このマシンをWECで実戦デビューさせるためのプロジェクトに関与している可能性があるのではないかと言われている。 一方でトヨタのWECプログラムに長年関わってきたフローリーは、代行ではあるもののテクニカルディレクターに就任する。彼は2021年にTGR-Eのスタッフとなるまでは、トヨタの仕事と並行してオレカのテクニカルディレクターを務めていた。そしてトヨタWECチームの運営をサポートするオレカとの連携の一環として、フローリーがWECプロジェクトの初期からチーフ・レースエンジニアを務めていたのだ。 なお、WECのシャシー開発はジョン・リッチェンスが、WRCのエンジン開発は青木徳生が引き続きプロジェクトリーダーとして指揮をとり、その進捗をフローリーに報告する形となる。TGR-Eは今回の人事異動を、「マネジメント組織の刷新の第一歩」と位置づけている。
Gary Watkins