糀屋三左衛門当主の村井さんが講演
経営と微生物の関係を語る
若手経営者らの勉強会「吉田塾」(塾長、山本明彦元副金融担当相)は2日夜、愛知県豊橋市西松山町の山本事務所で第165回例会を開いた。講師は、豊橋市の種麹メーカー「糀屋三左衛門」第29代当主で、ビオック社長の村井裕一郎さん。「発酵と経営」と題し、発酵の概念や、ワインと日本酒の考え方の違いなどについて語った。経営者や元市議ら約20人が出席した。【北川壱暉】 1979年豊橋市生まれ。時習館高校、慶応大学経済学部、同大学環境情報学部、米国際経営大学院に学ぶ。家業であり室町時代創業の種麹製造「糀屋三左衛門」、ビオックに入社した。2016年に35歳で家業を継ぎ第29代当主。伝統産業独自の価値観を生かした再生手法と事業承継について、ビジネススクールでの講演も精力的に続ける。昨年発売した「ビジネスエリートが知っている教養としての発酵」(あさ出版)が好評だ。 経営と微生物の関係性について「自分にできないことを信じて任せ、社員が活動しやすい環境をつくる経営の感覚は、発酵食品づくりと共通する。微生物の動きが自然と環境のコントロールになっていたり、栄養を補給する関係になったりしている」と説く。 参加者で東海漬物の大羽儀周取締役は「漬物づくりは発酵にブレーキを踏む感覚で、経営にその考え方は転用できるか」と質問した。村井さんからは、酒と漬物の違いについて「漬物は原料が表に出る一方で、酒などの発酵は表に出ない。従業員の仕事を表に出して発信するのも一つの手法では」と答えた。 ワインと酒の考え方の違いの話に発展した。「ワインは農業的、日本酒は工業的なアプローチ。ワインは気候や土、ブドウの実りに大きく作用するので、年によって風味が違う。一方、日本酒は先祖代々の技術や従業員を大切にし、昔と同じ味を作ることを大切にする」と説明した。
東愛知新聞社