黄金ルーキーは“プロの壁”をどう乗り越える? 「控えという野球人生」を知らなかった度会隆輝が2軍落ちで気付かされた課題とは
プロの世界は甘くない。「社会人No.1野手」が苦しんだ原因
今春のオープン戦で首位打者となった度会隆輝は、「社会人No.1野手」の前評判通りの実力、そして持ち前の人懐っこいキャラクターも相まって、開幕前から球界の話題をかっさらった。 【動画】これはエグイ!DeNAドラ1ルーキー、度会が放った開幕戦アーチの場面 度会の勢いは開幕してからも続いた。オープニングゲームで逆転弾、その翌日にはグランドスラムと、誰の目にも明らかな結果を出し、早くも「新人王筆頭候補」という声も上がった。 しかしプロの世界は甘くない。徐々に度会の成績は下降すると、守備でも精彩を欠く場面が散見。5月16日には2軍に降格し、晴れ舞台からフェードアウトとする形となった。 ぶち当たってしまったプロの壁。小さなときから親交があり、横浜高の先輩でもある鈴木尚典打撃コーチは、苦しんだ原因を挙げる。 「コンタクトするのが上手で器用な分、ボールの見極めがね。どのコースでも結構当てれるから、さすがにお前でも無理だろうっていう難しい球も手を出してしまう」 まず、度会のバットコントロールの良さを、悪循環に陥る原因の一つに分析した鈴木コーチは、「なおかつプロですから。本当に1打席に1球(打てるボールが)あるかないかの1軍の世界なので」と、がむしゃらに結果を出そうとした21歳が敵の術中に嵌ってしまったと説いた。 「初球からどんどん行くスタイルで、ボールを反応で打つタイプですから積極的に行くのはもちろんいいんですけど、向こうもプロですから、ボール、ボールから入ったり、フォークを続けたりとかで来る。それを打ちに行ってファールにしてしまったら追い込まれる。それは本当に打ちに行くべき球なのか、行っちゃいけない球なのかというのをしっかり見極められるようにならないとダメですね」 課題を明確にした鈴木コーチは、「横浜高校では1年からベンチに入ってずっとレギュラー。ENEOSでもレギュラーという野球人生しか送ってきてないと思うんです」とも厳しく指摘。自身の経験をふまえ、「自分がスタメンじゃない、自分が控えという野球人生がないんですよね。小中高、社会人と経験していま初めての心境を味わってると思う」とルーキーの胸中を慮った。 「1回り、2回り大きくなって、次に戻ってきた時はまたレギュラーを掴む。いまはそういう時だと思うし、来年、再来年含めて、彼が本当にスター選手になるための勉強だと思ってやりなさいっていう話はしたんです。リフレッシュではないです。修行ですね」 鈴木コーチの言葉には、苦しみを成長に変えてもらいたいという親心にも似た期待が込められていた。