AIの進化で日本人全員がマンガを描けるようになる? ビジネスの可能性も無限大に!!
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「マンガ」について。 * * * 漫画家が描いた漫画家ストーリーはなぜ面白いのだろう。 『ルックバック』(藤本タツキ)、『まんが道』『愛...しりそめし頃に...』(藤子不二雄A)が人類最高作なのは異論がない(当社調べ)。ほかにも『アオイホノオ』(島本和彦)、『バクマン。』(原作・大場つぐみ/漫画・小畑健)など、当ジャンルにはほぼ外れがない。 「政治家やスポーツ選手についてのマンガを漫画家が描くより、本当は自分で描いたほうが面白い」といわれることがある。しかし政治家やスポーツ選手はマンガを描くことができない。 だから、例外的に描く人=描かれる人となる漫画家マンガが特別に面白いのは必然だ。自分の仕事なら取材なく描ける。 インターネットとブログの発明により、これまで文章を公開することのなかった職業人たちが数十年前から自らの実態を発表している。ただし、文章ではなくマンガで世界に表現できたらもっと面白いだろう。 私は活字の書き手だが、ほんとうに書籍が売れなくなった。かつて「作家」という香ばしい職業があったと歴史は語る。しかし現在ではトップ数%しか専業モノ書きは実現しない。 そのなかで気を吐いているのがコミック(=マンガ)だ。読者の中にも、活字本は買わなくても、マンガならスマホで読めるから買っているひとがいるかもしれない。 成長を続ける日本のコミック市場規模は、紙と電子をあわせると約7000億円。一人が年間に平均7000円を払っているわけで、異常な額だ。私もKindleやLINEマンガで大量に買っている。 私の会社はサプライチェーンのコンサルティングに従業している。ただ、サプライチェーンといっても普通の人にはよくわからない。だから業務解説をマンガで作成し、PDFでダウンロードできるようにした。 そのマンガはプロに依頼して相当な金額を払った。その甲斐(かい)あって、相当数の読者を獲得した。コストが低ければ全コンテンツをマンガ化したいほどだ。文字の羅列は拒絶感があるひとも、マンガなら読んでくれる。 以前、私はアプリ『コミPo!』を使っていた。アバターを動かすことで簡単にマンガを作成できる凄(すご)いソフトだ。 ただ、キャラの雰囲気が自社のカラーと違っていたので、ビジネス用途は難しかった。しかし、これからも同様のソフトは登場するはずで、誰もがクリエイターになる日は近い。実際、ラフな絵からマンガを作成してくれる生成AIは多い。 またいっぽうで、プロの漫画家の補助ツールも需要がある。 働き方改革や人材不足もあり、長時間労働を防止する描画支援が重要だ。さすがにもっとも動きが早かったのは『週刊少年ジャンプ』を発行する集英社で、アプリ『ジャンプPAINT by MediBang』を発表している。単なるマンガ作成ツールではなく、編集部のテクニックすら学べるのだ。 先日、韓国に行った際に起業家仲間からライアンロケット社を紹介された。キャラの画像データを10枚ほど与えると、そのキャラをどんな格好にも描き換えてくれるAIの能力に感動した。描く時間を軽減し、ストーリーとキャラ創造に注力できる。 ハイコンテクストな創造物であるマンガを、日本人全員が描けるポテンシャルがある。これはマジで凄い。なんのツールでもいいので自社をマンガで世界にPRできるか検討せよ。