鈴鹿8耐参戦のサプライズも、これこそ未来を見据えた「スズキの現在地」…東京モーターサイクルショー2024
スズキは、3月22日に開幕した「第51回東京モーターサイクルショー」において、多数の車両を展示。プレスカンファレンスでは、新しいチャレンジに関する発表も行われ、スズキファンとレースファンを大いに盛り上げてくれた。 【画像全24枚】 今回、スズキが掲げたブースのテーマは、「JOY! FUN! SUZUKI!」だ。スズキのバイクと、人々が思い描く彩り豊かな多くのコトを結びつけることを目的とし、バイクだからこその喜び、うれしさ、楽しさ、面白さを表現。広々としたスペースに、全21機種25台が並び、多くの来場者を集めていた。 ◆時流を掴んだスズキのニューモデルが勢揃い スズキブースの見所を広報営業企画部の坂本清部長に伺ってみた。 「やはり、今年1月に市場へ投入されたばかりの『GSX-S1000GX』と『GSX-8R』には、ぜひ注目して頂きたいですね。GSX-S1000GXは、私どもの製品にとって初となる電子制御サスペンションを採用し、そこに独自の制御を盛り込むことによって、快適なツーリングを実現しています。また、GSX-8Rは軽やかな走りもさることながら、そのスタイリッシュさでも高評価を頂いており、ユーザー層の広がりを感じています」 確かにそうなのだ。この数年、スズキから送り出されるニューモデルには、ハッと目をひくようなフォルムやカラーリングが与えられ、時流を巧みに掴んでいる印象が強い。それだけでなく、『Vストローム』シリーズなどは、多様なモデル展開で幅広い選択肢を提供。今回のブースでも大きなスペースが割かれ、250ccから1050ccまでの全ラインナップを間近に見て、触れることができた。 「たとえばVストロームの250は、単気筒エンジン(SX)と2気筒エンジンのモデルがあり、お客様のニーズや用途に合わせてお選び頂けます。その違いを分かりやすく示すため、2気筒のVストローム250には、アクセサリー設定のケースを計3つ装着。荷物を積載した長距離ツーリングには振動面や足つき性で優位なこちらを、セミブロック調タイヤと単気筒ならではの軽さを活かしたスポーツ性ならVストローム250SXを。そんなイメージで展示しています」 この他、フラッグシップモデルの『ハヤブサ』にまたがり、景色が流れる大型ビジョンを背景に、風を受けながら動画や写真が撮れるフォトスポットを設置。様々なオフィシャルグッズが揃ったショップも、お土産を求める人々で盛況だった。 ◆鈴鹿8耐参戦のサプライズ そんなショーの初日、ひときわ話題を集める出来事があった。それがプレスカンファレンスにおけるサプライズ発表だ。特設ステージには、一台のマシンがベールを覆った状態で飾られていたわけだが、2輪事業部本部長の田中強氏が登壇し、Team SUZUKIとして、「2024 FIM世界耐久選手権コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース第45回大会」への参戦を宣言すると同時に、マシンを披露。しかも、燃料を筆頭にサステナブルアイテムを多用し、環境負荷低減を見据えた挑戦になることが明かされた。 事実、チーム名は「Team SUZUKI CN CHALLENGE」とし、CNはカーボンニュートラルを意味。ゼッケンナンバーは、その象徴である「0」になることも決まり、実験的なマシンが走る「エクスペリメンタルクラス」へエントリーするということだ。現段階でライダーは未定ながら、3名体制になるとのこと。マシンの概要は下記の通りである。 ■参戦車両 GSX-R1000R ヨシムラSERT EWC CN仕様 ■使用予定のサステナブルアイテム 燃料:エルフMoto R40 FIM 40%バイオ由来原料 マフラー:ヨシムラジャパン 触媒内蔵サイレンサー タイヤ:ブリヂストン 再生資源・再生可能資源比率を向上したタイヤ オイル:MOTUL バイオ由来ベースオイル カウル:JHI 再生カーボン材(プリプレグ材) 前後フェンダー:トラス スイスBcomp(天然亜麻繊維を使用した革新複合材料) 前ブレーキ:サンスター技研 熱処理廃止鉄製ディスク/ローダストパッド バッテリー:エリーパワー 車載LFPバッテリー/ピット電源供給用蓄電池 ◆このプロジェクトは今年一回限りではない このプレスカンファレンスでは、MotoGP参戦時のプロジェクトリーダーだった佐原伸一氏も登壇。鈴鹿8耐においても、プロジェクトリーダー兼チームディレクターとして、チームの指揮をとることが発表され、次のように語った。 「今回の参戦にあたり、ヨシムラジャパン様には初期段階から関わって頂き、現在も二人三脚で開発を進めています。プロジェクトの目的は、真夏の耐久という厳しい条件の中で走り、環境性能技術の開発を加速させることにあります。それにはデータ収集が重要になるため、まずは鈴鹿8耐の決勝を完走すること。そして、次のステップに向けてサステナブルアイテムを検証し、課題を抽出しながら、新たな目標を設定することにあります。 したがって、このプロジェクトは今年の鈴鹿8耐一回限りではありません。来年、再来年とより高いハードルを掲げ、将来的に継続して参戦する予定です。それが商品への技術フィードバックにつながると同時に、我々の成長と次世代の人材育成につながると考えています」 MotoGPからの撤退、そしてGSX-R1000Rが生産を終了する中、レースに対する熱をどこへぶつければいいのか。そんな思いをくすぶらせていた人は少なくなかったはずだが、この日の発表でスズキのモータースポーツファンは溜飲を下げたに違いない。未来を見据えた、スズキの現在地が感じられるショーだった。
レスポンス 伊丹孝裕