「今では立場が逆転」…医学と将棋のプロフェッショナルの、老いて「諦める」ものと「それでも頑張り続ける」もの
若手の邪魔をしてはいけない…
谷川でも少し若返られたんじゃないでしょうか。 山中といっても、研究も若い人の邪魔になってはいけません。自分が研究をやるということは、若い人のチャンスを一つ奪っていることになりますから。研究は以前のように自分がすべてするのではなくて、アドバイザーに徹する方法もあります。 いまはさまざまな大学の研究者と一緒に始めていて、研究グループの中で僕はダントツ年長者、一緒にいるみなさんは40代と若いんです。でもある意味、知識は彼らのほうがあるし、勢いもあります。彼らがフルにやってくれたらいいと思っています。所長時代は立場が違うので、対等という感じにはなりたくてもなれなかったんですけれど、今度は逆にこっちが教えてもらうような関係です。 谷川私も30代の若手棋士たちと月に一回ほど自宅で研究会をしていますけれども、2017年に始めたときは、タイトル戦に出たときの経験も含めて、こちらも教えることがたくさんあったんです。でもいまは若い世代の新しい考え方や感覚など教わるばっかりになってきて……どうにか見捨てられないようにしようと頑張っています(笑)。 山中自分が一生懸命やることによって、若い人たちも一生懸命にやりますからね。ただ、自分で見つけた遺伝子のNAT1だけは生涯のテーマなので、ぜひ自分で明らかにしたいですね。 『たった1つの遺伝子をノックアウトしただけで「ES細胞が無力に」...山中伸弥が生涯をかけて追い続ける遺伝子との「偶然の出会い」』へ続く
山中 伸弥、谷川 浩司
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