観光と防災の両立へ 全国初の津波避難複合施設で訓練 伊豆市土肥「テラッセオレンジトイ」
観光と防災の両立を目指す伊豆市は22日、沿岸の観光地でもある同市土肥地区で南海トラフ大地震を想定した津波避難訓練を行った。松原公園内に整備中の全国初となる観光機能を併せ持つ津波避難タワー「テラッセオレンジトイ」などを避難先に設定。地元住民だけでなく、観光客の命を守るための手段を検証した。 「一声かけて津波てんでんこ」をテーマに実施し、地域住民ら約200人が参加した。午前10時に大きな揺れが発生したと想定。公園内や海岸にいた参加者は揺れが収まったことを確認後、津波警報の発令を待たず「津波だ」「逃げろ」などと叫びながら避難。観光客役を務めた千葉大の学生らに声をかけ、同施設の階段を駆け上った。 同地区の津波浸水想定高は10メートル。津波が到達するとされる地震発生から6分以内には、ほぼ全員の参加者がタワーの屋上に逃げた。観光客役を務めた茨城県の公務員上原奈桜さん(25)は「どこに逃げていいか分からなかったが、地元の人から『一緒に逃げますよ』と声をかけられ、心強かった」と振り返った。 一部の参加者は衛星利用測位システム(GPS)機器を身につけて実施。市はデータを元に避難した経路や時間の把握、避難時に混み合う場所などを検証し、避難マニュアルの改善に役立てる。 地上4階建て鉄骨造の同施設は、レストランや直売所などを併設。平常時は観光施設として利用し、地震発生時には一時避難施設として活用する。避難面積は約600平方メートルで、約1200人が避難できる。7月12日に供用を開始する。
静岡新聞社