決意、迷い、失望、充実感―五輪に挑んだ21歳の卓球エース、コメントから垣間見えた心の内
パリ五輪は混合ダブルス、シングルス、団体の順で競技が進んだ。混合ダブルスの結果は初戦敗退。だが、次のシングルスに敗戦を引きずっている様子はなかった。 ▽シングルス にじむ充実感 シングルスでは今大会金メダルの樊振東(はん・しんとう)(中国)と準々決勝で対戦した。3―4の大接戦を繰り広げ、満員となった会場の現地ファンからは「ハリモト」コールが湧き起こった。試合後のコメントには充実感がにじんだ。「負けた試合の中では満足できる結果」 最後の種目の団体戦で順当に勝ち上がる中、混合ダブルスの負けをシングルスに引きずらなかった理由を明かした。「混合ダブルスで負けても、シングルスで無理に取り返そうとは思わない。シングルスで負けても、団体戦で倍頑張ろうとは思わないっていう気持ちでここまできて、それがすごく良かった」。これまでの敗戦で得た教訓だった。 ▽団体戦準決勝 もう力が残っていない 迎えた準決勝のスウェーデン戦は、また別の思いで試合に臨んでいた。勝ちにこだわりすぎない自分と、結果にこだわる自分。この日の張本の選択は後者だった。「全力で勝ち切る。ここだけは自分の信念を曲げて、ここで燃え尽きてもいいって気持ちでやりたい」。強い覚悟がにじんでいた。
3勝すれは決勝行きが決まる試合。エース対決は快勝したが、2―2で迎えた最終試合で逆転負けを喫した。2―0の優勢から巻き返され、コートに崩れ落ちて額を付けた。 「死んで楽になるんだったら死にたい。こんな思いをするぐらいだったら」 コーチや仲間に背中をさすられ、声をかけられてもしばらく立ち上がれない。生死に関わる言葉を使うほど、パリに懸けてきた思いは大きかった。「もう本当に力が残っていない。でも、やるしかない、と言うしかない」。まだ3位決定戦が残っていた。 ▽団体戦3位決定戦 これがスポーツの素晴らしさ 今大会最後の試合となった3位決定戦。中一日でコートに立った。エースの目には、輝きが戻っていた。地元フランスに敗れ3大会連続の表彰台を逃したが、張本は最後まで懸命にボールを追い、コートで躍動した。 試合の後に張本はこう語っている。「今まで僕が勝ってきた試合の裏でも、負けて涙をのんできた選手がたくさんいる。負けがあるから勝った時にうれしい。悔しさがある分だけ、喜ぶ人がいる。これがスポーツの素晴らしさなのかな」 ▽アスリートにできること