あばれる君 看護師として働く彼女と大学生だった自分。後輩芸人との食事では机の下からお金を渡してもらい…
◆本格的にお笑いの道へ 大学3年生の後半、まわりは就職活動で忙しくしている中、僕は本格的にお笑いの道へ入っていきます。 そんなとき、ネットでとある相方募集の掲示板を見つけました。 そこでアマチュアお笑い団体が団員を募集していました。 「根性ある人、やる気ある人募集」という文字から漂うシンプルかつスパルタな薫りに少し惹かれたのです。 当時の僕は、お笑い芸人としての第一歩が踏み出せることで血気盛んでした。 どんな環境であろうと、ある程度の厳しさは夢のためにじゅうぶん受け入れる覚悟ができていました。 そこで僕は、1年ぐらいのヤバい修行期間を過ごすのです。 そのヤバさをひとつあげるとすれば、「ライブが終わったあと、団長が自分よりウケた団員に毎回すごくキレる」ことです。 しかし、お笑いを学べているという現実がなにより楽しくて、苦しみを余裕で凌駕(りょうが)していました。
◆勘違いの手応え そんな団体の厳しいチケットノルマを達成するために、ゆかちゃんは友達を連れてライブを観に来てくれたりしました。 ゆかちゃんが一度、お母さんを連れて観に来たときがあります。 「給食費を盗んだ生徒を、家庭環境から勝手に推測する教師のコント」をやり終わったあと、口を開かずものすごくやさしい目をする二人を見て、勘違いの手応えを感じたのを思い出します。 今思えばあれはコントのセリフに引いていた表情でした。 でも、舞台でネタをやる僕を見て、ゆかちゃんは照れくさそうに、嬉しそうに、見守ってくれるのでした。 やっと動き出した僕を喜んでくれたのだと思います。 ※本稿は、『自分は、家族なしでは生きていけません。』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。
あばれる君
【関連記事】
- 息子の面倒を弟の妻に見てもらいながら<女性法曹のパイオニア>として飛躍した『虎に翼』モデル・嘉子。ただし特段「女性の問題」に熱心だったわけではなく…
- 青木さやか 娘が出かけた後、毎朝わたしはゲンナリする。「部屋、片付けなさいよ」「うん、今日やる!」繰り返されるやりとり【編集部セレクション】
- 銀行で学費を振り込もうとしたら詐欺被害に遭っていると疑われ…77歳の芸人「おばあちゃん」NSC入学までのてんやわんや
- 71歳で養成所に入学した芸人・おばあちゃん。「女性に対しておばあちゃんは失礼」と講師が言う中でこの芸名に決まった理由とは
- 哲夫(笑い飯) 仏教マニア、塾経営者、農家、花火解説者…お笑い以外の仕事を考えたことがない自分が<六足のわらじ>を履くようになったワケ