<エネルギーの自衛に走るドイツ>ウクライナ戦争で目覚めた国民、日本も国民的な議論を
エネルギー価格の高騰は、ドイツの22年の消費者物価上昇率を6.9%、23年に5.9%に押し上げた。インフレのために国内消費や工業生産が低迷し、23年のドイツの実質国内総生産(GDP)成長率は、主要7カ国(G7)で最低のマイナス0.3%に落ち込んだ。 ドイツはロシアから割安の天然資源を輸入し、高級車や工作機械など高付加価値の製品を輸出して国富を増やしてきた。だがこのビジネスモデルには、ロシアのウクライナ侵攻によって終止符が打たれた。ドイツの産業用電力の価格は、米国の約2.5倍だ。ドイツの製造企業の間では、天然ガス・電力価格の高さを嫌い、米国や東欧に生産拠点を移す企業が増えている。競争力低下と、製造業の空洞化が現実化しつつある。
エネルギー危機の教訓を踏まえ再エネ強化に舵を切る
大半のドイツ市民は、「電力と天然ガスは好きな時にいくらでも使える」と思い込んでいた。しかし、22年のエネルギー危機によって、彼らは電力や天然ガスが高騰し不足する危険があることを学んだ。 ドイツ人たちはこの教訓に基づき、政策を変えた。一つはエネルギー調達先の多角化だ。ドイツ政府は、ロシアのような非民主主義国家、強権国家からのエネルギー輸入を避け、欧州連合(EU)が重視する普遍的な価値を共有する国からの輸入を増やした。EUが重んじる普遍的価値とは、議会制民主主義、人権尊重、言論の自由、差別の禁止などだ。23年にはロシアからの直接の輸入量はゼロになり、ノルウェー(43.4%)、オランダ(25.8%)などが主な供給先となった。石炭、原油についても同様の措置を取った。 ※こちらの記事の全文は「Wedge」2024年9月号で見ることができます。
熊谷 徹