「肉と違って魚は規格がないから価格で比較するしかない」日本に流通する“水産品”の課題点とは? 株式会社フーディソン代表取締役CEO山本徹が語る
◆あくまでも軸足は“水産”
フーディソンの従業員は現在150~160人。その内実は、魚の加工技術を持っている職人から物流センターのマネジメント、さらにはエンジニアやデザイナー、マーケター、営業など多種多様で、年代も20代から60代まで幅広く、新卒も採用しているそう。 山本さんは、ここまでの業績について、「魚の流通領域でECや小売などひとつの機能だけを強化するのではなく、全部ひっくるめて、この業界ごと良くしていこうとする(我々のような)チャレンジはまだまだ知られていないと思うんですけど、知っていただいた方には、かなり興味を持っていただけるようになっていると思います」と振り返ります。 また、最近は取引先の飲食店の要望で、野菜やお肉の取り扱いも始めているそうですが、「“流通改革”という意味では、あくまでも軸足は“水産”。というのも、流通のなかで魚の流通が一番大変なんです。そこで信頼を得られるということは、食のなかで何かを新たに広げていくにあたっても大きな資産になります」と持論を述べます。そこで、魚の流通の醍醐味を伺うと「デジタルだけでなく、物流ともつながり物事を変えていくことがすごく面白いです」と話します。
◆魚を“消費者フレンドリー”にしていきたい
フーディソンではDXで独自のシステムを構築し、業界に新たな風を吹かせています。「例えば、ECサイトで注文を受けた際、魚を選んで出荷するのは専門家じゃないとできませんが、僕らは、すべてではないものの、一部の作業にバイトの方にも入ってもらっており、要は“(出荷作業を)仕組み化”しています。人の知見の型に押し込めたり、誰かに任せないといけないのではなく、人の知見から外れて仕組み化しているからこそ規模化できる。そこは、DXが相当進んでいるところだと思います」と胸を張ります。 加えて「日本の労働人口は確実に減少し、特に市場で従事する人はどんどん減っていくと思っています。それは、“産地で水揚げ量が減っているから魚の流通が途絶える”という以外にも、“水揚げはされるものの魚を流通させられる人がいないから東京に魚がこなくなる”ということも起こり得ると思っています。なので、水揚げから食卓に上がるまでの工程において、職人しかわからないことを一般化させていくこと、紙をなくしてデジタル化を進めることで担い手を増やし、流通をサステナブルにしていくことを進めていきたいです」と力を込めます。 最後に、山本さんの今後の展望を伺うと、「僕はもっと魚を消費者フレンドリーにしていきたいです」と声を大にします。続けて「肉は“A5ランク”とも格付けされていて、もともと流通上の規格ですけど、今は消費者サイドも“A5ランク”といえば良いお肉のイメージを持ちます。一方、魚はそうした規格がないから価格で(価値を)比較するしかないんですよ。そこをもっとわかりやすく伝える方法を考えていかないといけないと思います」と言及。 さらに、「例えば、全国の養殖場で作っているブリのナンバーワンを決めるグランプリをやってみてもいいと思います。今季の一番おいしいブリが分かると面白いじゃないですか。ただ、これはすごく難しい。それこそ当然、ランク付けをすると負ける人が出てきてしまいますが、僕はそこで頑張って評価を高めていくことが、この業界を良くしていくことだと思うんですよね。そうやって、何かしらの基準を設けられれば、魚という食材をより身近なものに受け止めてもらいやすくなるのかなと考えています」と話していました。 (TOKYO FM「DIGITAL VORN Future Pix」9月14日(土)放送より)