英中銀、0.25%利下げ 金利4.75% 予算案受けた物価高予想
Andy Bruce Suban Abdulla [ロンドン 7日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は7日、政策金利を5%から4.75%に引き下げることを決定した。 2020年以降で2度目となる利下げで、新政権による初の予算案によるインフレ上昇や経済成長見通しを受け、今後の利下げは緩やかなものになるとの見方を示した。 金融政策委の利下げ決定8対1。マン委員は据え置きを主張し利下げに反対した。 ベイリー総裁は声明で、「目標に近いインフレ水準を維持するため、早急な、あるいは大幅ま金利引き下げはできない」と指摘。 その上で「しかし景気が予想通りに進展すれば、徐々に金利は低下を続ける」と述べた。これは9月会合後の声明とほぼ同じだ。 ベイリー総裁は会合後の記者会見で、中銀が物価圧力の主要指標としているサービス部門のインフレ率は依然として高すぎると指摘。「総合インフレ率を目標とする2%にするには、サービス価格の上昇が広範に鈍化する必要がある」と述べた。 同時に、インフレ率が予想以上に低下し続ければ、利下げペースが加速する可能性があると指摘。利下げは緩やかにしか行えないというのが中銀の基本的な立場だとしながらも、インフレ率は8月に示した予想を超えるペースで低下しているとし、「こうした進展が続けば、中銀は対応する」と語った。ただ、「緩やかな利下げ」が四半期ごとの利下げを意味するかについては明言を避けた。 また、予算案の影響で今後の金利の道筋が異なるものになるとは考えていないと述べた。 イングランド銀は、財務相が先週発表した予算案について、来年の経済成長率を0.75%程度押し上げるが、2ー3年の年間成長率はほとんど改善しないとの見通しを示した。 予算案のインフレへの影響については、今後2年強でのピークインフレを0.5%ポイント弱押し上げるとし、2%目標に持続的に戻るにはさらに1年かかると予想した。 今後の利下げを巡る中銀の慎重な表現は過去数カ月と同様で、欧州中央銀行(ECB)に比べ利下げは緩やかとの市場の見方に沿ったものだ。 INGのエコノミスト、ジェームズ・スミス氏は、予算案で大幅な支出増が示されたにもかかわらず、英中銀は将来的な利下げを巡る状況は変わらないとの見解を示したと指摘した上で、12月の会合で金利据え置きが決定された後は、来年2月以降に利下げペースが加速するとの見方を示した。 <今年の成長率見通し1%に下方修正> 英中銀によると、インフレ率は9月の1.7%から年内には2.5%程度に上昇、来年末までに2.7%に達する可能性が高いとし、予測期間3年間の終わりまでには徐々に2%を下回る水準に低下するとの見方を示した。 バス運賃の上限、私立学校授業料への付加価値税、国民保険料の雇用主負担分の引き上げなどの施策はインフレ率を押し上げる可能性が高い。 雇用主負担分引き上げについて中銀は、最低賃金の6.7%引き上げもあり雇用主はコスト上昇に直面するが、従業員解雇や収益減受け入れで対応する可能性があるため、インフレへの全体的な影響については不確かとした。 過去の成長率に対する最近の修正を反映し、今年の平均経済成長率見通しは1.25%から1%に引き下げた。25年の見通しは1%から1.5%に引き上げた。「政府の消費と投資が、増税が成長に与える影響を相殺する以上に強く、また相対的に前倒しで実施されることを反映している」とした。 中銀の成長・インフレ率の見通しには歳出増と増税の影響を勘案しているが、市場借入コストの大幅上昇は事前に想定できなかったため含んでいない。市場金利の上昇を織り込んだ場合、インフレ率と成長率見通しはやや低下する可能性が高い。 中銀はまた、インフレ率を持続的に2%目標に戻すためには、金融政策が「十分に長く制限的」である必要があると改めて表明した。 <声明に米大統領選の言及なし> 英中銀は声明文で、5日に実施された米大統領選で共和党のトランプ前大統領の返り咲きが決まったことについては言及しなかった。 ベイリー総裁は記者団の質問に答える形で、トランプ氏の通商政策を注視すると言及。「世界経済の分断には多くのリスクが伴う」とし、今後の展開を見守りたいと語った。 ICAEWのエコノミックス・ディレクター、スレン・ティル氏は、英予算のほか、米国のトランプ次期政権が導入する可能性がある新たな関税措置などに起因する世界的リスクの高まりがインフレ圧力につながる可能性があるとの見方をを示している。