『スロウトレイン』脚本・野木亜紀子×演出・土井裕泰が“新時代のホームドラマ”を語る
◆葉子が編集として携わることになる「盆石」とは、どういう出会いを? 土井:たまたまテレビで、来日した外国人が盆石の家元を訪ねていく番組を見たんです。それですごく興味があって、あれって一瞬の芸術なんですよね。完成したら羽根でさっと払って無に返してしまう。そんな話を野木さんにしたら、葉子の作る本の題材にしたらどうかということになり、実際に体験しに行ってもらいました。 野木:ハマりますね、あれ。毛先のちょっとしたコツで出来上がる絵が変わるし、先生の作られた盆石が段違いで素晴らしすぎて、うらやましくなるし。 土井:今回、実際の細川流の先生に出演していただいてるんです。まだお若いんですが、本当に素晴らしい作品を魔法のように作られるんです。 野木:ただ、お稽古事としては難度が高いんです。お道具が希少品で、それなりに年数を積まないと手に入れることすらできない。 土井:白鳥の羽根を使っているし、もうなかなか手に入らないみたいですね。 ◆実際、撮影を振り返っていかがでしたか? 土井:韓国ロケは寒くて、ちょっとキツかったけど(笑)、総じて撮影は楽しかったです。数ページにもわたる長いシーンも多かったんですが、キャストの皆さんが素晴らしくて、あっという間に終わってしまったという印象ですね。 野木:お芝居うまい方ばかりですし、助かりますよね。 土井:松坂君は実際にお姉さんと妹がいるので、潮の環境がとても分かると言いながら楽しそうにやってましたね。 ◆今回、お正月の放送となりますが、その点は意識されたのでしょうか? 野木:そもそも、特番の枠がお正月ぐらいしかないって言われていて(笑)。書き始める段階で葉子がおおみそかをどう過ごすかが思い浮かんでいたから、そこに向けて作ったところはあります。きっと葉子と同じような過ごし方をしている人もたくさんいるだろうし、テレビの画面を通じて共感し合えたらいいなと。 土井:TBSでは昔から『向田邦子新春ドラマスペシャル』を放送していて。時代背景はいろいろなのだけど、新年に家族のことをしみじみと考えるいい機会だったんです。このドラマもそんなふうになればいいなとイメージしてやってました。 野木:向田ドラマと比べるなんて、恐ろしいこと言いますね(笑)。 土井:あとは、久しぶりにテレビドラマらしい作品を届けたいという気持ちもありました。野木さんも言ってましたけど、このドラマって爆発しないし、スーパードクターもラスボスも出ないし、タイムリープもしないんです(笑)。僕自身はそういうドラマも好きだけど、今ここでベーシックに帰ることが逆に新しいんじゃないかなと。 野木:ホームドラマって形は変われども、ずっと描かれていくものだと思うんです。『海に眠るダイヤモンド』も昭和のホームドラマという一面があるわけで、変遷していく家族像みたいなことはいくらでも書けるんじゃないかなと。こうしたベーシックな、刺激の少ないドラマだって見たい人がたくさんいると思うんですね。私自身もたまにこういう作品を書くことが、心の安寧にもつながるというか(笑)。 ◆少し気は早いですが、続編も考えていますか? 土井:重鎮作家の二階堂を演じてくださったリリー・フランキーさんが、「これ毎年やればいいのに」と言ってくださったんです。このきょうだいがどうなっていくのか見続けたいと。毎年は難しけど、何年か後に実現させたいという思いはあります。もちろん、見てくださった人たちから、渋谷家の3きょうだいや百目鬼(星野源)にまた会いたい! という声が集まったらですけど。 野木:犬猿の仲だった、百目鬼と二階堂の関係はどうなるんだと。 土井:タイトルは、『スロウトレイン、北へ』かな?(笑) 野木:『スロウ、スロウトレイン』と2回言ってみるとかね(笑)。 新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』 TBS系 2025年1月2日(木)午後9時~11時15分 <キャスト> 松たか子、多部未華子、松坂桃李、星野源 チュ・ジュンヒョク、松本穂香、池谷のぶえ、倉悠貴、古舘寛治 宇野祥平、飯塚悟志、菅原大吉、中村優子、毎田暖乃 リリー・フランキー、井浦新 <スタッフ> 脚本:野木亜紀子 演出:土井裕泰 プロデューサー:小牧桜 スーパーバイジングプロデューサー:那須田淳 協力プロデューサー:韓哲、益田千愛
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