欧州の防衛新興への投資額「10億ドル突破」へ、国際情勢不安で期待高まる
欧州の「防衛テック」へのVC投資額は今年、初めて10億ドル(約1420億円)の大台に乗る見通しだ。ウクライナでの戦争、新たな武器や戦略の出現を背景に、テック面で大きな変化が起こっている中でスタートアップは軍隊の対応力を維持するために政府が必要とする革新的なソリューションの少なくとも一部を提供している。 こうした内容が、報告書『2024年防衛投資の現状:北大西洋条約機構(NATO)と欧州におけるレジリエンスビルダー』に記載されている。同報告書はスタートアップデータサービスのDealroom(ディールルーム)が26日に発表した。時を同じくして、政治家や軍の幹部、業界リーダー、ベンチャーキャピタル、スタートアップが一堂に会する会議が英ロンドンで開かれた。 報告書からわかることは何か。Dealroomのデータによると、この分野へのVC投資は急増しており、2018年以降は約30億ドル(約4250億円)に達している。驚くことではないだろうが、ドイツ、フランス、英国の防衛関連企業がそうした投資の大部分(正確には87%)を取り込んでいるが、防衛技術に対するVCの関心の高まりは欧州全体に及んでいる。 ■新たな視点 アーリーステージ投資プラットフォームのPlural(プルーラル)でパートナーを務めるカレド・ヘリウイの見立てでは、テック分野の起業家らは新たな防衛能力の開発で重要や役割を果たす。ヘリウイがこの分野に興味を持ったきっかけは、最近の紛争でドローン(無人機)やその他の無人ビークルの形をした新兵器が配備されているのを見たことだった。戦争は変化しており、それが新たなリスクをもたらしているとの結論に至った。 「既存の装備や能力では今日の戦場で繰り広げられている状況に対応できないという点で、欧州各国の主権が真に不安定であることに気づいた」とヘリウイは言う。「防衛や防衛装備についての考え方を変えるには起業家が必要だと思った」 そうした起業家らは、防衛産業に身を置いている人たちとは限らない。「他の産業や異なる経歴を持つ人たちの方が多くの知識を持っていると感じた」とヘリウイ。「彼らは新たな脅威に対処するための良い方法を見つけるだろう」 ヘリウイはその後、ドイツ発スタートアップのHelsing(ヘルシング)にエンジェル投資家として出資した。人工知能(AI)を手がける同社は7月にVCファンドのゼネラル・カタリストが主導するシリーズCラウンドで4億8700万ドル(約690億円)を調達し、欧州の防衛テック産業を象徴する企業のひとつとなった。プルーラルもヘルシングに出資しており、まだ発表されていないが同社は新たに複数の防衛案件を獲得しているという。