商船三井、LNG輸送船を1.5倍に増強へ-脱炭素も需要拡大見込む
(ブルームバーグ): 商船三井の橋本剛社長は、液化天然ガス(LNG)の需要拡大をにらみ、輸送船を将来的に現在の1.5倍に増やす考えを示した。
橋本社長は22日のインタビューで、既に建造を決めた船ができあがれば、船隊規模は約130隻まで増えると述べた。LNGの需要は当面拡大が続くとして、同社の運航するLNG船の規模は将来的に150隻程度まで増えるとの見込みも示した。同社は現在約100隻のLNG船を運航し世界首位の規模だ。
気候変動への懸念を背景に再生可能エネルギーは拡大が続く一方、石炭よりも二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない天然ガスの今後の需要を巡っては見方が分かれている。国際エネルギー機関(IEA)は2030年までに世界のガス需要はピークに達すると予想しているのに対し、英シェルは石炭の代替としてアジアなどの新興国の需要増がけん引し、LNG需要は40年までに50%以上増加する見通しだとしている。
橋本社長は、CO2削減に向け特に中国とインドは石炭消費量を減らす必要があり、「それを代替できるものというのはLNGとかLPG(液化石油ガス)が中心になってくる」と指摘。石炭や石油の消費が減った後に化石燃料ではガスが最後にピークアウトすると見て「われわれもここから10年ぐらいの間は拡大基調を維持していくのが合理的ではないかと思う」と続けた。
LNGを巡ってはロシアによるウクライナ侵攻など地政学的な影響も大きく受けており、商船三井が関与する北極圏のLNG開発事業「アークティックLNG2」も昨年11月に米政府の制裁対象に加えられた。橋本社長は商船三井がアークティック2と結んでいる契約の通りにLNG砕氷船3隻を用船してもらうのは難しく、船の売却や契約の譲渡などを検討していると述べた。
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コロナ禍の影響もありアークティック2向けのLNG船の建造は遅れており、最速で今夏ごろにできあがってくる予定だとし、橋本社長は「これからどうするか決めていかなくちゃいけない」と語った。建造までに決定しなければ造船所に置いておくことになり、収入は得られなくなるが、「拙速にどうこうする必要も必ずしもない」と述べ、慎重に検討を進めていく考えを示した。