【モラハラ夫】外面が良すぎて、家以外では「仏」と呼ばれるほど。本性は、実家の土地建物まで奪い取る「鬼」だった
誰も夫のモラハラを信じてくれない
Nさんの夫がいい人からモラハラ夫に変わったと確信したのは、結婚して1週間目のことでした。 いつもは帰宅すると「お帰りなさい」「ただいま」の声がけをしていたのですが、その日はNさんが「お帰りなさい」を言っても夫は無視をして通り過ぎました。疲れているのかなと思い、「ご飯の前にお風呂に入る?」と聞いた途端に「うるせえ!お前のしつこさが鬱陶しいんだよ!」と大声で怒鳴られたのです。 Nさんはあまりのことに驚き、泣くこともできずに立ちつくしてしまったそうです。 それから1週間、夫はNさんと一言も口を聞きませんでした。 『私はどうしたらいいのかわからず、母に相談をしました。母は「あなたが夫さんを怒らせたのよ、あんないい人が怒るなんてよっぽどしつこくしたんだね。早く謝りなさい。」と私が悪いと決めつけていました。 実は私は一人っ子で夫は養子に入ってくれたのです。養子に入ってくれたという感謝の気持ちが両親とも強く、娘の私より夫を大切にしていると感じていました。』 夫に対して自分が何をしたのか、何が悪いのかもわからずに夫から無視をされ、それを相談すれば自分が悪いと言われるなんて、気持ちの持っていく場所がありません。 誰もわかってくれない辛さ、結局わかってくれないので誰にも相談できない、そんなことが続き孤独感が強くなるのです。 友人も両親も自分よりも夫の味方をする、「あなたが悪い」とみんなが言う、そんなことが続く孤立無援の状況では、正常な思考ができない状態になります。自分が悪い、自分が完璧じゃないのがいけない、怒られないようにするにはどうしたらいいのか、そんなことばかり考えて自己肯定感が日々なくなっていってしまうのです。 モラハラ被害者の方は皆、自己肯定感がほぼゼロ状態になっています。
親もモラハラ夫の外面の良さに騙され、家の名義も夫のものにしてしまった
夫のモラハラは日常的になっていましたが、Nさんの両親のいる前では本当にいい人を演じていたといいます。両親の前ではNさんに対して「後片付けは僕がやるからゆっくりしなよ。」「いつも美味しいご飯を作ってくれるNちゃんをお嫁さんにできて僕は幸せです」なんて言葉を平気で言っていたのです。両親は夫を「婿様」と呼び「本当にいい人が来てくれた。我が家の宝だ。仏様だ」といつも言っていました。 両親はNさんが結婚して10年経った日に夫を呼び「私たちが持っている家の名義を婿様に変更するので受け取って欲しい。これからもずっと家族として頼む」と、Nさんには一言も相談なしに夫に伝えたそうです。 『私は夫が心の中でほくそ笑んでいる様子が手に取るようにわかりました。後から両親に「家の名義は私にして。私が娘なんだから」といくら訴えても「旦那さん名義の方がいい」と相手にしてもらえませんでした。子ども達が成人したら離婚する」そう決めていたのに、家の名義を夫のものにされたので、家から出ていくこともできなくなりました。』 なぜモラハラ夫相手に離婚しないのか、と思う方もたくさんいると思います。離婚を選択できないのには以下のような理由があります。 経済的依存: 経済的な自立が難しい場合勇気が持てません。Nさんの場合は帰る実家が夫名義になり、両親も夫の味方になってしまったことが離婚できない理由となります。 子どもの存在: 親権や子どもの養育費などの問題、子どもが成人するまでは我慢すると言う方も多くいます。 恐怖と不安: 夫にずっと否定されてきたことで自己肯定感がなくなり、自分は社会で認めてもらえない、働く場所もない、1人で子どもを育てていける自信がない、夫が別れると言っても承諾してくれないと言う場合です。 希望: いつか優しかった時のように態度や言動を改めてくれる、と期待し続けることです。 それぞれの理由は当事者にとってはすべて大きな問題です。その問題をクリアできれば離婚を選べるのですが、問題クリアするにはどれもハードルが高く簡単には結論が出ません。 【前編】では、Nさんの周囲の友人はおろか実の両親までもが、夫がモラハラをしていると言っても信じてもらえない状況がつづき、自分の落ち度ばかりを気にして過ごしているNさんについてお伝えしました。 ▶つづきの【後編】では、実の両親がモラハラ夫の正体を見破ることができなかったばかり、取り返しのつかない事態になってしまったという、Nさんの人生を左右することになる出来事についてお伝えします。
モラハラ/HSP専門カウンセラー 麻野祐香