奥田民生が「がんばって遊ばなくていい」という理由
自分は将来どうなるだろう……。そんな不安を持つ人は少なくないのではないだろうか。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など疑問がつきない。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。「力まず自然体でカッコいい大人」代表の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その言葉を見ていこう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子) ● ひとりでボーっとしていたい 「仕事は趣味で遊びみたいなもの」だけど、そんな俺にもオフは必要。 でも最近のオフはたいていは家にいて、次の遊びの予定を立てたり、ひとりでボーっとしていたりすることが多い。 そうやって考えごとをしていると、気づいたら1日が過ぎている。 ● 昔はガムシャラに遊んだ そんな俺も30代の頃はガムシャラに遊んでいた。 ツアーの合間の移動やオフはいつも「釣り」で、地方に行っても機材トラックに釣り具を積み込み、各地でとにかく釣りまくった(キャッチアンドリリースだ)。 歳をとったら釣りはゴルフに変わったけれど、釣りだのゴルフだの若い頃は時間がたっぷりかかるものばかりやっていた。 当時は時間が空くのがもったいなくて「なにかやらんと」「遊ばんと」と思っていたのもあった気がする。 ● 歳をとったら脳内で遊べる でもユニコーンの再始動のときだから、40代前半で「四十肩」になると、一時期ゴルフができなくなって、そのせいでなんとなくカラダを動かすのが億劫になった。 以来、釣りはやってない。 ただ身近な友達に釣具屋のやつがいるから、いまでも釣りの話(ルアーのアイデアを出し合ったり)はよくするし、ルアーは触るだけでも結構楽しい。 ゴルフは復活させたけど、家ではYouTubeを見て頭の中でスイングしたりするだけで、上手くなった気になっている。 でもまあこの歳になったら、それでいいのだ。 ● 「ぼーっとする」のも大事 多くの人は土日休みの「週休2日」なんじゃないかと思うけど、俺の場合、曜日に関係なくライブがあったり、レコーディングがあったりするから、休みはだいたい週1日。 でも、休みが少ないとは思っていない。 なぜなら「がんばる時間」は少ないからだ。 ライブの日なんて実働はせいぜい2、3時間だし、レコーディングも長い日はあるにはあるけど集中するのは2、3時間で、後は「移動」や「待ち」とムダな時間は結構多い。 俺の場合、仕事も「壮大な時間のムダ遣い」のようなものだけど、ただムダな時間は結構大事で、ぼーっとしてるとなんかアイデアが浮かんできたり、ムダな時間があるから集中できてる気もしている。 ● 「がんばって遊ぶ」より「遊ぶように暮らす」 昔は「時間がもったいないから遊ばなくちゃ」だったけど、最近は「疲れるからやめておこう」が先行する。 いまの方が老い先が短いから、昔より焦って遊んでもおかしくないけど、最近はそういう感覚がなくなってきた。 遊びは大事。だけど「がむしゃらに遊ぶ」より、最近は「遊ぶように暮らす」方がいいんじゃないかと思っている。 若い頃はなにもしないで1日を過ごすなんて「もったいない」と思っていたけど、いまは、そんな感じでぼーっとしながら生きている。 (本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)