千葉県「百年後芸術祭」 小林武史さんプロデュースの内房総アートフェスを見逃すな
2023年に誕生150周年を迎えた千葉県では各地で「百年後芸術祭」が開催されている。中でも注目なのが、市原市、木更津市、君津市、袖ケ浦市、富津市の内房総5市を舞台とした「百年後芸術祭~環境と欲望~内房総アートフェス」(2024年5月26日まで)。総合プロデューサー・小林武史のユニークなコンセプトの下に展開される、気鋭の現代美術家たちの作品や関連イベントを紹介する。 【写真はこちら】草間彌生など多くのアート作品がある木更津市・クルックフィールズなど…内房総5市の見どころ、必見の作品をチェック!
■音楽、ダンス…多様な表現駆使したライブも
この芸術祭の総合プロデューサーで音楽家の小林は木更津で農場をベースとした複合施設・クルックフィールズを営むなど、千葉と深い関わりをもつ。 アートディレクターを務めるのは北川フラム。北川は2014年から市原市で「房総里山芸術祭 いちはらアート×ミックス」を行い、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」など近年隆盛している日本の芸術祭を多数手掛けてきたことで知られている。 小林はタイトルにある「百年後」という言葉について、こう語っている。 「未来をつくっていくということは、環境と欲望の両立と共振を探っていくことなのではないかと思っています。他者の利益を考えることは環境を考えることにつながり、自己の利益を考えることは欲望につながる。利他のマインドを持ち続けることは簡単ではないかもしれませんが、『百年後』という視点を持ってみると、自分が存在していない未来を利他的に想像できるのではないかと」 この芸術祭は、大きくは「LIFE ART(ライフアート)」と「LIVE ART(ライブアート)」という2つの要素で構成されている。前者は、17の国・地域のアーティスト77組が展示する合計91点のアート作品。後者は小林がプロデュースする、音楽と、映像、ダンス、ドローンなど多様な表現方法を駆使したライブパフォーマンス「通底縁劇・通底音劇」。この「通底」という言葉にも小林のユニークな思考が込められている。 「1997年に東京湾アクアラインが開通して、過密で人工的なものであふれる東京と、ほとんど手がつけられてないような自然も残る房総半島を海底トンネルで結びつけた。それによって新しい化学反応が起きるような機運が高まったと思います。その様が、(文化人類学者の)中沢新一さんが話していて知っていた(詩人で文学者の)アンドレ・ブルトンの『通底器』と重なりました」 くしくも100年前の1924年に『シュルレアリスム宣言』を発表し、シュルレアリスムを本格始動させたブルトン。彼が著した『通底器』に出てくる同名の器は、錬金術で用いられる実験器具で、複数の管の下部がつながった形状をしている。