大学ラグビーで「東高西低」を打ち破る天理大旋風!帝京大のV10を阻止し決勝進出果たす
独自路線で強化を進める天理大は、レギュレーションの変更という追い風も受けていた。 今季から大学ラグビー界では、外国人の同時出場枠が「2」から「3」に増えた。その意図決定までのプロセスはややぼんやりしているが、小兵集団を率いる小松監督は「よく伝統校が反対しなかったな、と。うちは日本人選手が身長を含め小さいので、(外国人枠の増加は)スクラム、ボールキャリー(攻撃時の突進)などで戦力アップ(に繋がる)」。 主にマキシ、フィフィタ、ロックのアシベリ・モアラという日本航空石川高出身者を起用し、要所でインパクトを与えた。 さらに「(留学生が)チームのために戦うという感じになっている」とは、小松監督。2008年に第一号グループとして入学のアイセア・ハベア、シオアシ・ナイを筆頭に、海外出身者はグラウンド内外での勤勉さが買われてきた。現役4年生のマキシにはきれい好きの一面もあり、寮や部室が汚れていたら後輩を注意する。 帝京大戦でモアラが光ったのは、接点上の相手ボールに食らいつく防御だった。攻撃以外の地味な仕事にも汗を流すその姿が、求心力を高めている。当の本人は流ちょうな日本語で言う。 「高校で悔しい思い(日本一になれなかったこと)をしていたので、天理大に入ったら絶対に帝京大に勝とうと思っていました。(接点でのプレーは)ずっと、練習していました」 大学選手権での帝京大戦は、2016年度の準決勝以来だった。当時は24-42と屈した小松監督だが、今度の再戦ではコンタクトの強度が「イーブン」だったと見る。 「東高西低」と叫ばれる大学ラグビー界にあって、指揮官は「もともとは『打倒関東』と思っていたのですけど、最近は『打倒東海大』『打倒帝京大』と、具体的に目標を定めることができまして」。成長を実感できた。 1月12日の秩父宮での決勝戦では、昨季準優勝の明大とぶつかる。明大には春、夏の練習試合で連勝中だが、「(勝ったことは)忘れる」と小松監督は気を引き締める。大学選手権では戦法、メンバー構成がより練られている。トレーニングマッチの結果は当てになりにくい。 天理大の初の日本一への鍵は、やはりスクラムと接点になりそうだ。 明大のスクラムもまとまり重視で、大型選手が固まって重さを活かす。それに対し天理大は小さいだけに、先手を取って押し切りたい。もっともその気持ちがはやり過ぎると、ペナルティーを下されるリスクもある。レフリーの合図や解釈へも首尾よく対応したいだろう。 接点では、全国屈指のボールキープ力を誇る明大にマキシ、モアラ、岡山らがどこまで刺さり、絡めるか。援護の分厚い接点には見切りをつけ孤立しそうな選手に複数名で襲い掛かるなど、繊細な判断を下してゆきたい。 「明大さんの試合をレビューして、しっかり準備したい」とマキシが言えば、小松監督は「うちのチーム力をいかに出せるかにかかってくる。決勝でも自分たちの力を出せるようにしたい」。相手の脅威と弱点を精査したうえで、自軍の強みを発揮したい。 (文責・向風見也/ラグビーライター)