英首相が解決要求、ルーシー・ブラックマンさん失踪事件 警視庁150年 109/150
「同居する友達の姿が見えない」。平成12年7月4日、警視庁麻布署に、英国籍で日本に住んでいたルーシー・ブラックマンさん=当時(21)=の捜索願が出された。ルーシーさんは3日前、「千駄ケ谷で男性と待ち合わせしている」と言い残して外出した後、失跡していた。 報告を受けた麻布署長は異質さを感じ、捜査1課に連絡し、本格的な捜査が開始。英国のブレア首相=当時=が早急な解決を日本に要請するなど、事件は外交問題の様相も呈し、展開に注目が集まった。 聞き込みを重ねる中で、ルーシーさんが勤務していたクラブの常連客だった会社役員の男が浮上する。別の女性が昏睡(こんすい)状態にされ、暴行を受けた疑いも出てきた。捜査1課は同年10月、別の女性への準強制わいせつ容疑で男を逮捕し、計7回の逮捕を重ねる。 焦点はルーシーさんの行方だった。男の別宅に近い神奈川県の三浦海岸で捜索が行われ、13年2月9日、洞窟でセメント詰めにされた遺体が見つかった。男はルーシーさんら女性2人への準強姦致死罪をはじめ、計10人の女性への性的暴行に関与した罪で起訴された。 法廷傍聴記を書いた記者を告訴するなど、男は徹底的な法廷闘争を展開。1審ではルーシーさん事件に関して無罪とする無期懲役判決となった。しかし、2審は無期懲役を維持した上でルーシーさんへの死体損壊罪などを認定。約10年に及んだ裁判は22年に確定した。(内田優作)