「日本の刑務所ヤバい…!」監獄内を描いた日本映画(2)そんなに快適なの!? 衝撃の矛盾が描かれる一作とは?
今回は刑務所を舞台にした日本映画5本をセレクト。普段見ることが出来ないからこそ気になる刑務所内では何が行われているのか...。囚人たちの日常を描いた喜劇作から、更生プログラムに向き合うドキュメンタリーまで、受刑者たちのリアルな姿を観察できる刑務所映画を一挙に紹介しよう。今回は第2回。(文・寺島武志)
『刑務所の中』(2002)
製作国:日本 監督:崔洋一 原作・原案:花輪和一 脚本:崔洋一、鄭義信、中村義洋 キャスト:山崎努、香川照之、田口トモロヲ 【作品内容】 ガンマニアぶりが高じすぎてしまい、銃砲刀剣類不法所持違反で逮捕され服役した漫画家の花輪和一が、刑務所での体験を漫画として描いた作品を映画化。監督は2022年11月に惜しまれながらも亡くなった、名匠・崔洋一が務めている。 【注目ポイント】 本作では、自由のないはずの刑務所の中で過ごす囚人たちが、ささやかな楽しみを見出だしながら、どこか楽しそうな受刑者ライフを送っている様を描いている。作品の中で描かれている彼らの日常は皮肉にも、どこかほのぼのとした世界だ。 物語自体は淡々と描かれており、特に何か特別な事件が起こるストーリー展開はない。しかしながら、刑務所内の様子はかなり事実に忠実に描かれている。 原作者の実体験が元となっているだけに、その描写はリアルさにあふれている。刑務所の中とはどんな場所なのかという、一般的な興味を満たしてくれる内容だ。その刑務所ライフの中には、笑えるエピソードもあり、さらに、いわれる“ムショめし”なども味わい深く、コミカルに表現されている。 当然のことながら、刑務所とは、犯罪者に対し罪を償わせるために存在する場である。しかしながら、同作で描かれている刑務所の生活はもしかすると日常生活より快適かもしれない。そんな場面も多々見られる。主人公が懲罰房に移されるシーンもあるが、それすらも楽しんでいる。加えて、刑務所ライフのハイライトともいえる食事のシーンでは、思わず食欲をそそられるほどだ。 社会のルールに反した人が、刑務所では従順な生活を過ごし、かつ楽しんでさえいるようにも思える。同作で描かれた刑務所がリアルだとすれば、日本における再犯率の高さ、ひいては、刑務所のリピーターが多いのもうなずけるといえよう。その矛盾が、同作を見れば“犯罪者とは何か”を考えさせる。