動画は見られないが…スマホ持たぬ大阪桐蔭、強さの秘密 センバツ
第94回選抜高校野球大会は最終日の31日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で決勝があり、大阪桐蔭が近江(滋賀)を破って歴代2位タイの4回目の優勝を果たした。史上初となる2度目の春夏連覇を達成した2018年以来4年ぶりの制覇。 【写真】大阪桐蔭 「KK超え」の破壊力 決勝 大阪桐蔭が圧倒的な力で王者となった。ただ、連日の報道を選手たちは詳しく知らない。スマートフォンを持っていないからだ。最近はプロ選手の動画を参考にする高校球児が多いが、なぜ「スマホを持たない」大阪桐蔭が強者であり続けるのか。 大阪桐蔭は全選手が寮生活で、スマートフォンを持つことを禁止している。西谷浩一監督(52)は「スマホが駄目なんじゃない。ただ、部屋でスマホを触ると、睡眠時間が減るのではないか」との懸念から見送ってきた。 スマートフォンを使う場合は、コーチが指導の際に動画撮影する時。17年、当時2年生だった藤原恭大(ロッテ)らが感覚と実際のフォームにギャップがあったため、映像も交えて指導するようになった。 準決勝で2ランを放った3番の松尾汐恩(3年)は「なかなかヒットが出ず、練習で修正した」と語る。試合前に打撃フォームが小さくなっていないか気になり、相談したコーチのスマートフォンで撮影してもらった。確認すると好調時と同じで、逆に大きく構えすぎていたことに気づき、修正して復調につなげた。西谷監督は「選手はプロの動画は見られないが、誰よりも自分自身と向き合っている」と力説する。 チームを作るうえでは寮での時間を大切にしており、課題の共有のため日々ミーティングを行うが、それでも時間は足りない。 今年の3年生は特にチーム力を大事にしてきた。昨夏の甲子園からのレギュラーは松尾のみ。だからこそ「(選手は)野球ができる喜び、試合に勝つことに飢えていた」と西谷監督。昨秋の明治神宮大会で初優勝した後も、星子天真主将(3年)が「秋の時点で勝っただけだから」とミーティングで何度も言い続けた。冬場の練習では「もっとノックを打ってほしい」「もっと走り込みをしたい」と選手から「もう一丁」の声が出た。自身と真摯(しんし)に向き合い続け、向上しようとする大阪桐蔭の強さの一端だ。 新型コロナウイルスの影響で今大会の出場校だけでなく、全国の高校も活動制限など影響が出ている。先行きが見えない中で秋よりも成長し、春の日本一に輝いた。【安田光高】