一条天皇の目は覚めるのか? 災難の連続の道長…安倍晴明が言う「宝」とは【光る君へ】
『枕草子』の大ヒットは伊周プロデュースだった!?
そして今回もう一つ注目されたのが、都に戻ってきた藤原伊周が、かつての栄光を取り戻すため、清少納言が書いた随筆を使って、かつての「中宮のサロン」を復活させようとしたことだ。清少納言は『枕草子』の跋文(あと書き)で「多くの人に見せるつもりで書いたものではなかった」と記しているが、これが自信の裏返しの謙遜ではなく、伊周のプロデュースで思いがけず世に広まることになってしまった・・・という解釈にしたわけだ。 今で言うと、推しのために読者限定で書いていた文章を「これ、推しの良い宣伝にもなるから、本にしてバンバン売り出そう!」と言われるようなもの。人によっては激しく拒否するだろうし、清少納言も最初は良い顔をしていなかったけど、当代切っての文化人・藤原公任(町田啓太)が出入りするようになったのを見ると、その作戦は成功したのだろう。そして清少納言も、かつては「皇子産め」しか言えなくて侮蔑の眼差し向けていた伊周の思惑に、今では乗っかっているような感触もある。
安倍晴明の言う道長の「宝」とは、娘の彰子と…
そして「おもしろい文章を書く女房をダシにして、天皇や公達たちに足を運んでもらう」というこの作戦。今後道長の娘・彰子(見上愛)が入内したときにも受け継がれ、そこでまひろに白羽の矢が立つことになるわけだが・・・ 安倍晴明が言う道長の「宝」とは、彰子であることは間違いないけど、彼女の栄華に一役買うことになるまひろの存在もまた、晴明は予言したのかも? とはいえ『枕草子』が現在でも広く読まれるのは、もしかしたら伊周のおかげかと思うと、私たちは伊周に少し感謝した方がいいのかもしれない。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月30日放送の第26回『いけにえの姫』では、まひろと藤原宣孝(佐々木蔵之介)の波乱の結婚生活と、道長が娘の彰子を、やむなく一条天皇に入内させるまでを見せていく。 文/吉永美和子