企業は情報を隠したがる? 「若者雇用促進法」はザル法か就活の味方か?
THE PAGE
違法な働き方を強いるブラック企業が問題となる中、若者が自身に合った企業を見極められるよう、新卒求人を出す企業に、残業時間の実績などを提供するよう求めた「若者雇用促進法」が、今年3月に施行された。しかし、企業に対する罰則がないことなどから、2017年卒の新卒採用ではなかなか浸透しておらず、大学の就職支援担当者からは「ただのパフォーマンスと取られかねない法律」と厳しい声も聞かれる。就活生らはこの法律をどうとらえているのか?
「情報を出していない企業がすごく多い」
6月上旬、都内の私立大学で、就職活動中の学生に話を聞いた。文系学部に通う4年生の女子学生(21)は「法律ができたことを知らなかった。現状は情報を出していない企業がすごく多い。大きな企業ほど載せていなかったりする」と話した。説明会などでも聞きづらいといい、情報がわからない場合はそのままにしているという。 ほかの学生からは、「転職者向けの口コミサイトを見て、社内の実態を把握するようにしている」「社員との座談会などがあれば、場が和んでいる時に思い切って聞く」などの対応が聞かれた。残業時間や有給休暇の取得日数の実績といった職場情報について、学生が把握するには未だに神経を使わざるを得ない状況が垣間見えた。
課題を抱えたままの「若者雇用促進法」
同法が施行されるまで、離職者数や平均勤続年数、残業時間の実績や有給休暇の取得日数など職場情報の提供については、企業の裁量に任せられていた。そのため、多くの企業が自社に不利な情報を学生に知らせずに済み、新卒採用を受ける学生らは実際の働き方についてイメージすることができず、ミスマッチによる早期離職につながっていた。こうした状況を改善するため、国は新卒者の募集を行う企業に対し、幅広い職場情報の提供を努力義務とする同法を整備。応募者が求めれば、企業は情報提供しなければならない義務も課した。 ただ、同法には課題が多い。まず、守らなかった場合の罰則がない。そのため、企業側には提供しなければならないという認識が薄くなってしまううえ、虚偽の数字を示すこともできてしまう。 また、応募者に求められた場合、情報を提供する義務が課せられたが、類似の情報の提供でも構わないとされている。厚生労働省が示す3つの項目から各1つ以上を提供することになっているため、平均勤続年数を聞かれた場合でも、新卒採用の離職者数を答えて済ますといったことが可能だ。 加えて、応募者が企業に情報提供を求める場合、学生は氏名や大学名などの個人情報を明記の上、メールか書面で求めなければならない。