智弁学園8強 鬼門託された背番号10の配球 選抜高校野球大会
第93回選抜高校野球大会は第8日の27日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で2回戦が行われ、智弁学園(奈良)が広島新庄を破り、準々決勝進出を決めた。同じく2回戦を突破した天理とともに、奈良県勢2校がベスト8に進んだ。奈良勢2校の8強入りは、第49回大会(1977年)の両校以来44年ぶり。智弁学園は第9日第3試合の準々決勝で、明豊(大分)と対戦する。試合は智弁学園の小畠一心投手(3年)が2失点完投と好投した。 【今大会のホームラン】 「4番の花田選手を抑えたあそこがポイントだった」 智弁学園の小坂監督が勝負の分岐点と振り返ったのが、八回2死二、三塁での守りだ。背番号「10」の先発・小畠が初戦でサヨナラ打を放った主軸を打ち取った投球には、対戦の度に「上書き」された配球があった。 1ボール2ストライクから4球目の勝負球は、外に逃げながら沈む130キロのツーシーム。わずかに高かったが、投ゴロに打ち取りピンチを切り抜けた。 花田は四回無死一塁の第2打席でも、外角のツーシームで二ゴロ併殺に打ち取られていた。それでも、八回の第4打席は「(ツーシームは)頭にはあったが、思うように反応ができなかった」。分かってはいても、打てない。そう花田に言わせた4球目だが、実は2球目が利いている。139キロの内角高めの直球に、花田は虚を突かれたように振り遅れファウルとなった。「外」だけでなく「内」もあると意識させた時点で、緩い変化球も含めて選択肢が多い小畠の投球術の勝利だった。 切り替えもお手の物だ。ファウルで粘られれば「三振は取れない」と打たせて取る配球にチェンジ。前の打席を踏まえて配球パターンを変更する機敏さで2失点完投につなげた。 2016年にセンバツ初優勝を果たした智弁学園だが、それ以外では12年以降、春夏とも2戦目までに敗れている。小坂監督は「二つ目を勝って勢いに乗りたい」と話すが、重要な2戦目の先発をエースではなく、背番号「10」に託した。1年夏の甲子園で先発しながらもその後安定感を欠き、大事な試合ではエース左腕の西村を起用していたが、開幕1週間前には「2回戦は小畠」と決め、本人にも伝えていた。「西村も小畠も信頼している」と二枚看板を強調する小坂監督。狙い通りに鬼門を突破した。【安田光高】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。