黙秘の被告に「引きこもり」と検事暴言 「不適正」認定、首相襲撃で
和歌山市の選挙演説会場で昨年4月、岸田文雄首相(当時)の近くに爆発物が投げ込まれた事件で、現行犯逮捕された木村隆二被告(25)を取り調べる際、検事が「家に引きこもって社会に貢献できない」などと侮辱する発言を繰り返していたことが関係者への取材で分かった。取り調べは録画され、内容を確認した最高検は「不適正」と認定した。 【動画】取調室のでのやりとりイメージ。黙秘する被告に検事が「すごくかわいいなって思う」とも 取り調べを担当したのは和歌山地検の男性検事(36)。関係者によると、木村被告が黙秘していると、検事は「木村さんはかわいそうな人」などと話し始めた。 捜査機関は「社会に感謝される」存在だが、「木村さんみたいに家に引きこもっていると感謝されることもほとんどないでしょう」と発言。「引きこもりのまま人生を終えても、少なくともマイナスは与えない。木村さんは外に出て社会にマイナスを生む」「全然、替えがきく。逮捕されても困らない」と告げた。 また、終始目をつむっている木村被告に対し、二択の質問をして「肯定なら目を開けて」と要求。木村被告が目を閉じていると、今度は「否定なら開けて」などと求める行為を2時間以上続けた。 取り調べは警察の捜査段階から録画され、黙秘をしてもほぼ連日、長い日で7時間以上続いた。 弁護人が同年5月に「黙秘権を侵害した」「事件と無関係の発言で被告の尊厳を傷つけた」と苦情を申し入れ、最高検の監察指導部が録画映像から事実を確認して「不適正だった」と認定。地検は検事を指導した。 木村被告は威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕された。岸田氏にけがはなかったが、地検は爆弾の殺傷能力から殺人未遂に罪名を切り替え、五つの罪で同年9月に起訴した。来年2月に和歌山地裁で裁判員裁判が始まる。(山本逸生、阿部峻介)
朝日新聞社