欧米が〝脱中国EV〟日本に追い風か 中国から報復関税や部品・資源の禁輸の可能性 永久磁石、リチウムイオン電池など弱点…重要な立ち位置
イタリア南部プーリア州で開催中の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は14日(日本時間15日未明)発表した首脳声明で、中国による電気自動車(EV)などの過剰生産に懸念を表明した。中国製EVについては欧州連合(EU)や米国が関税引き上げを発表しており、中国側の報復措置も予想される。G7首脳は中国に重要鉱物の輸出規制を控えるようにも求めたが、EV生産に欠かせないリチウムイオン電池や永久磁石について、米国は中国からの輸入頼みという弱点を抱える。米大学の研究者はEV関連部品について「日本のシェアが急拡大しなければ、供給網に問題が生じる」と警告する。欧米の「脱中国」が加速するなか、日本は〝追い風〟を生かせるのか。 ◇ 中国政府は国内企業に巨額の補助金を出してEVや太陽光パネルなどを大量生産させている。首脳声明ではこうした過剰生産は「公平な競争を妨げ、市場の安定を乱す」と指摘した。 サミット開幕前日の12日にはEU欧州委員会が、中国メーカーが当局から「不当な補助金を受け取っている」として、中国から輸入されるEVに7月以降、最大38・1%の追加関税を課すと発表した。税率は現行の10%に上乗せされ、最大48・1%となる。 米国も中国製EVや半導体など重点分野での制裁関税の引き上げを発表済みだ。8月以降、EVの関税は25%から100%に、EV向けリチウムイオン電池は7・5%から25%に引き上げる。黒鉛や永久磁石は来年1月から25%に引き上げる見通しだ。 資源やエネルギー問題に詳しいユニバーサルエネルギー研究所の金田武司代表は「米国の狙いは自国の自動車産業保護に加え、中国が奴隷労働のような環境で安価で大量生産しフェアに競争できないことへの政治的な抗議のメッセージも強い」とみる。 欧州交通環境連盟(T&E)によると、2023年にEUで販売されたEVのうち、中国で製造されたものが19・5%を占めた。27年には26%まで伸びる見通し。これには米テスラなどが中国で生産したEVも含まれるが、中国メーカーに限っても、23年の7・9%から27年に20%に達すると予測している。 米国ではやや事情が異なる。米カリフォルニア大学サンディエゴ校のカイル・ハンドリー准教授(経済学)が開発した分析ツールによると、23年の米国のEV輸入先国別シェアは、ドイツの29・5%が首位で、韓国23・5%、メキシコ19・9%、日本11・2%と続き、中国からの輸入は2%に満たない。