立憲代表選、野田佳彦元首相「12年ぶり復権」で政権交代に必要なもの 11月にも予想される総選挙の行方は?
野田立憲が自民党と向き合うスケジュールは以下のとおりだ。 自民党が9月27日に新総裁を選出。石破茂元幹事長、小泉元環境相、高市早苗・経済安保相のいずれかが選ばれる可能性が大きい。10月1日召集の臨時国会で新首相が選出された後、組閣を済ませ、所信表明演説、衆参両院での代表質問などを経て衆院が解散され、総選挙になだれ込む。 この総選挙こそ、野田立憲の最初で最大の試練だ。まず、党組織をまとめることが不可欠。民主党以来、政策や党運営をめぐって内部対立が続き、有権者の信頼を失ってきた。
■小沢氏とは「恩讐を超えた」協力体制 2021年に枝野氏に代わって代表に就いた泉氏は、2022年の参院選で敗北したが、岡田克也幹事長や大串博志選挙対策委員長らが泉体制を支え、地道に国政選挙の候補者を発掘。2024年4月の衆院3選挙区の補欠選挙では、立憲の公認候補が3勝するという成果を上げた。 12年前に消費増税をめぐって野田氏と全面対立した小沢氏は、今回の代表選で野田氏を支援。「恩讐を超えた」(野田氏)協力態勢ができた。理念や政策が異なっても、自民党との対決を重視して結束していく政治文化が定着すれば、立憲にとって政治的な成熟を示すことになる。
野党同士の連携も課題だ。国民民主党は、同じ民主党系の仲間でもあり、選挙での棲み分けは難しくない。連合も立憲と国民の一体化を望んでいる。右の日本維新の会、左の共産党との連携は難題だが、自民党に対抗する候補者の一本化という大義名分の下で結集することは可能だ。 野田立憲の政策はどうか。2009年の政権交代で、当時の民主党は沖縄県の米軍普天間飛行場を「最低でも県外、できれば国外」への移転を掲げたが、実現できなかった。政府予算の無駄の削減で子ども手当などの財源を確保すると訴えたが、大幅削減はできなかった。
そうした「苦い経験」を踏まえて、今回は「できないことは言わない原則」(岡田幹事長)が打ち出されている。野田氏は、消費税の減税は見送り、集団的自衛権の一部を容認した安全保障法制の見直しもすぐにはできないという立場だ。 格差解消のための富裕層増税として、金融資産課税の強化が検討されているが、これも急速に進めると株価暴落などにつながる可能性があり、慎重な対応が求められている。 野田氏はそうした事情を踏まえて「現実的」な政策を打ち出す考えだ。立憲内部では左派から不満が募るだろうが、政権交代をスムーズに進めるには現実的な対応が必要になる。党内の対立が強まれば、自民党から「立憲はバラバラ」と批判され、有権者の不信につながるだろう。まさに野田氏のリーダーシップが試されるのである。
■日本政治の行方を左右する1年に 11月にも予想される総選挙では、野田立憲が議席を増やすとしても、自民・公明両党を半数割れに追い込むことができず、政権交代は実現しない可能性が高い。その場合、2025年1月からの通常国会が与野党の攻防の舞台となる。自公政権が追い詰められ、2025年夏の参院選で自民党が大敗し、与野党逆転となれば、政局は一層混迷する。 衆院解散・総選挙に追い込まれれば、政権交代が現実味を帯びる。裏金事件で揺らいだ自民党政権をどこまで追い詰められるか。今後の「1年政局」は、野田立憲だけでなく、日本政治の行方を左右するだろう。
星 浩 :政治ジャーナリスト