創業46年の老舗ヘッジファンド、破綻の理由は投資の失敗にあらず
(ブルームバーグ): ヘッジファンドのパイオニア、ジョージ・ワイス氏は「全部売れ」との指示を出した。
ファンドの閉鎖が迫っていることを、泣きだしそうな様子のワイス氏がズームでポートフォリオマネジャーたちに告げた。従業員たちは仰天した。1978年に設立されワイス氏の名を冠したヘッジファンド運用会社は、創業46年にして終焉(しゅうえん)を迎えた。
今年2月29日の朝、ワイス氏の驚くべき指示は、世界最古のヘッジファンドの一つを破産に追い込んだ一連の失策の終着点となった。失策というのは、投資で大きな損失を出したというようなことではない。破産寸前でも幹部に気前のいいボーナスを支払うなどといった同社の慣行だ。
トレーダーたちは同日、数十億ドルのポジションを処分した。銀行のトレーディングデスクに電話をかける傍らで、別の社員はトラブルのうわさを聞いたリクルーターからの問い合わせに対応していた。
ワイス氏が直接スタッフに別れを告げたとき、同氏は会社を家族と呼んだ。
従業員や債権者はそうは考えなかった。ワイス・マルチストラテジー・アドバイザーズの破綻により、一部の社員は100万ドル(約1億5600万円)以上の繰り延べ報酬を失うことになった。最大の債権者は1億ドルを超える未払い債務を巡る争いに備えている。
事情に詳しい関係者へのインタビューや裁判資料からは、破綻の原因が取引の大失敗にあったのではなく、資産が減少し業績が低迷する中で長年にわたる高額支出を抑えることができなかったことにあったことが浮き彫りになる。
ワイス氏(81)とジョルディ・ビサー最高投資責任者(CIO、57)は、23億ドル規模の会社を大規模なマルチストラテジーのライバルのような華やかさで経営していたが、規律を重んじることなく、負け組トレーダーを切り捨てる冷酷さもなく、投資家にさらなるコストを押し付ける能力もなかったことが、関係者の話や裁判所の文書から分かった。