シロフクロウの前に掲げられた「岡田照夫」と記されたプレート（京都市左京区・市動物園）

　京都市動物園（左京区）で飼育展示されているシロフクロウが、「岡田照夫さん」として親しまれている。柵の前に掲げられた名前入りのプレートを見て呼ばれたり、SNS（交流サイト）に写真が投稿されたりしている。だが実は、フクロウの本名は「イワン・トー」。全く違う名前のプレートが出されている訳を聞くと、動物園愛あふれる物語が浮かび上がった。 【写真】「岡田照夫さん」と呼ばれているフクロウ 　2016年5月に神戸市立王子動物園から来た雄のシロフクロウ。丸くてふわふわした白い鳥で、柵の前に掲げられた縦15センチ横30センチのプレートに「岡田照夫」と記されている。見学に来た幼稚園児が大声で「岡田さん!」と呼ぶ光景がしばし見受けられるという。 　X（旧ツイッター）には「岡田照夫さんに会いにきました」「誰が名付けたのか」「風格があるから納得」―。シロフクロウの名前と信じて疑っていないだけに疑問が湧く。「岡田照夫」さんとは一体誰なのか。答えは「市動物園サポーター制度」にあるようだ。 　同制度の一つ「エサ代サポーター」は市民や事業者が動物の餌代を支援する目的で始まった。500円から寄付でき、寄付額によって特典が変わる。10万円寄付すると、希望する動物の前に名前や事業名、ロゴを記したプレートが1年間掲示される。 　園によるとアジアゾウやニシゴリラといった動物の希望者は多いが、シロフクロウの希望者は岡田さん1人だった。プレート設置の希望者が1人の動物は他にもいるが、「岡田さん」のような現象は起きていないという。園は「他の動物は複数いるが、シロフクロウは1羽しかおらずプレートの名前も1人だから間違われやすいのかも」と推測する。 　寄付者に話を聞くことができた。京都市在住の男性で、「岡田照夫」は男性の父親の名前という。現在88歳で男性が介護している。 　岡田照夫さんはかつて石炭業を営み、動物園の暖房の燃料として石炭を販売していた。男性は「園には父がとてもお世話になった」と振り返る。 　男性が寄付を始めたきっかけは新型コロナウイルスだった。「長期間休園を強いられた園を助けたい」と2020年に10万円を寄付。翌年は20万円に増額した。今年は30万円を寄付している男性は「動物園はまちの宝。できる範囲で支えたい」と力を込める。 　名前を掲げる先にシロフクロウを選んだ理由について、男性は「福」の字と掛けて縁起がよいのと、子どもに人気がありそうだったからという。 　シロフクロウが「岡田さん」と呼ばれていることについて、男性は「動物に関心を持ってもらうきっかけになってうれしいね。フクロウも声をかけてもらって喜んでいるのでは」と笑った。