織田裕二“司馬”が院内でスパスパ喫煙、医師同士で乱闘…90年代の勢いを感じる<振り返れば奴がいる>
旬な俳優がカッコいいセリフを放ち、流行りの小道具やセットが使われるテレビドラマや映画の世界は、その時代を切り取る鏡といえる。そのとき最もオシャレとされる空間が詰まっているだけに、数年経った後で見てみても十分人々を魅了する力があるのが往年のヒット作だろう。 【写真】織田裕二、主演作「IQ246~華麗なる事件簿~」で石黒賢と再共演 現在、FODでは「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンを開催中で、少し昔の様々なヒット作を見ることができる。10月5日(土)まで第1~3話が無料公開されている織田裕二と石黒賢主演の「振り返れば奴がいる」(1993年、フジテレビ系)より第3・4話を紹介しよう。(以下、ネタバレが含まれます) ■赴任してきた石川が司馬を懲罰委員会にかける 今から31年前に放送された「振り返れば奴がいる」は、大病院に赴任してきた熱血漢の青年医師・石川(石黒賢)と、若くして天才的なメスさばきを誇る司馬(織田裕二)が、医師としての信念を巡って激しく衝突していくさまが描かれる。男と男がプライドや信条をかけてバチバチにやり合うハードボイルド系医療ドラマであり、公開中の映画「スオミの話をしよう」で監督・脚本を務める三谷幸喜が初めて脚本を担当した連続ドラマ作品としても有名だ。 第3話は、石川の提案で、司馬の懲罰委員会が開かれる回。手術直後、停止していた患者の心臓が動き出したのに司馬は、患者の蘇生を隠そうとし、春美(松下由樹)に、心電図を切るよう強要し、患者を見捨てたというもの。司馬は無表情で、「何もしていない」と開き直る。春美が「心電図を切るように言われた」と証言しても、司馬は「そんなことを言った覚えはない」と突っぱねる。石川は心電図のスイッチが切られたデータを集め、重要証拠として持ち込んだ。 続く第4話では、大企業の社長が天真楼病院へ運び込まれ、すぐにでも手術しないと動脈瘤破裂のおそれがある中、仕事に行きたがる社長を医師たちがどう説得するのかという話。主任医師の平賀(西村雅彦)は、どうしたものかと司馬に相談する。そんな二人に社長秘書が金を差し出すと、司馬は戻って来たら手術をするということを条件に外出を許す。だが、石川は、ニセ診断書まで作って豊間を外出させることに猛反対。強引に病院を出て行こうとする社長と大モメになってしまう。 ■院内喫煙も男尊女卑も当たり前の時代 第3・4話でさらに、独自の医療信念がある司馬と真面目一辺倒の石川のライバル関係が激しくなっていき、溝は深まるばかりといったところ。優等生キャラの春美は2人の関係にオロオロしっぱなしで、何なら色恋要素を加えてしまってケンカの火種を作っている。 第3話の懲罰委員会の議題は、手術室で司馬と春美と2人きりだったときに起きた出来事であり、他の医師たちを納得させる釈明ができたもの勝ちという雰囲気の中で、司馬が力づくで春美を抑えつけ脅したシーンなどは、女性の尊厳を奪われているという点で今では考えられないほどひどい。 今では考えられない、という場面は他にもたくさんある。司馬と元彼女の医師・沢子(千堂あきほ)が病院内でタバコをスパスパと吸いながら談笑したり、当直の医師が入院患者と麻雀卓を囲んで楽しく夜を過ごしているなど、この時代を知らない若い世代の視聴者はきっと驚くのではないだろうか。司馬が石川に廊下で殴られて口から血を流すなど、石川も十分問題児だなという印象もある。 ただ、それが当時の当たり前だったし、司馬が変わり者であるがゆえに傍若無人さはより濃く描かれており、今見ると時代の移り変わりを興がるという視点からでも楽しい。この後の2人の関係も気になってしまうだろう、一気見のチャンスである。