「100億投資しても、効果が全然出ない企業も…いったいなぜ?」御社の「DXが大成功する」解決策はたった2つだ そもそもの大前提として「まずやるべきことは?」専門家が解説
こうした「大胆な改善」を実現できるのも、DXならではのことです。 「守りのDX」であったとしても、これくらい「大胆な目標」を実現することで「事業の成長のきっかけ」となることが期待できます。 たとえば、スピーディーで精度が高い回答が顧客の満足度を高めることは疑いようがなく、顧客のつなぎとめや深掘りにつながります。そしてその評判が、新規顧客の獲得の誘因にもなるのです。 実際に、アメリカのフィンテック企業である「ロビンフッド社」は、株売買の無料サービスによってミレニアル世代を中心とした顧客の急速な拡大に成功しました。
業務効率化に関する取り組みもあったのでしょうが、HFT(高度高頻度取引)業者に販売してリベートを受け取る、つまり必要なコストを外部転嫁することで、無料サービスを成立させたことが大きかったのです。 ちなみに「ロビンフッド社」はこの情報を隠していたことによって2020年に制裁金を課されましたが、2021年にはNASDAQ上場を果たしています。 「大胆な目標」を設定し、実現する手法を考えていくことで、こうした「思わぬ発想」が出てくる期待も持てるというものです。
■DXうんぬん以前に「相手の課題」を見つけるのが重要 また、「ロビンフッド社」のケースでは、「その手法をデジタルのみに求めていない」という点も認識しておくことが大切です。 たとえば、「機器・設備を安価に販売し材料費や保守代で稼ぐ」のは、古くからある稼ぎ方ですが、これなども機器・設備を「(無償で)業務プロセスを提供」というものに置き換えてみることで、新たな商機も考えられるでしょう。 また、「営業案件の紹介でマージンをいただく稼ぎ方」も古くからありますが、仕入れ先・協力会社・自治体といった顧客以外のステークホルダにとっては、顧客との(無料の)取引に商機を見出せる機会は多くありそうです。
つまり、「デジタルの使い方・活かし方」を考える前に、まずは「相手が持っている課題」を見つけることが重要です。 既存の顧客対応の「業務プロセスの効率化」から新しい事業やビジネスを生み出していく機会は、どの業種・企業にも見出せるはずだからです。
大野 隆司 :経営コンサルタント、ジャパン・マネジメント・コンサルタンシー・グループ合同会社代表