”幻の切手”を切り口に考える沖縄の本土復帰の歴史 特別授業を考案したのは53歳の中学校校長
沖縄の戦後の歴史にとって大きな節目となった「本土復帰」。しかし、学校などで学ぶ機会はほとんどなく、沖縄歴史教育研究会が2022年に実施した調査では、高校生で2割程しか「復帰」を知らないという統計もある。 【画像】”幻の切手”を切り口に考える沖縄の本土復帰の歴史 特別授業を考案したのは53歳の中学校校長 今の沖縄に繋がる歴史を若い世代にどう伝えていくのか、模索する教育現場を取材した。
復帰の雰囲気を伝えることができるギリギリの世代
沖縄市の宮里中学校。 2024年5月15日、2年生のクラスで沖縄の本土復帰をテーマにした特別授業が開かれた。 宮里中学校 金城均 校長: 5月15日、沖縄が復帰した日なんですけど、どこからどこに復帰したのかわかる? 教壇に立ったのはこの春、宮里中に赴任した金城均校長(53)。 金城均校長は「復帰の雰囲気というのを伝えられるギリギリの世代だから、ちょっと頑張らないといけない。校長になった時に現場でこんな話ができるのならと思っていた」と特別授業を企画した意図について語った。 戦後、アメリカ施政権下で基地のない平和な島の実現を訴えてきた人々の歴史や、今も続く沖縄の課題を考える上で重要な5月15日の復帰の日だが、子どもたちの多くが知らないのが現状だ。 Q.5月15日は何の日かわかりますか? 宮里中学校の生徒: 何の日かな?文化の日? Q.沖縄が本土に復帰した日なんだけど、聞いたことある? 宮里中学校の生徒: ないです
復帰について学ぶ機会のない現状
復帰50年を迎えた2022年、沖縄歴史教育研究会が高校生を対象にしたアンケートでも、復帰の日を正しく答えられたのはわずか22パーセントという結果であった。 その要因として、学習の機会がほとんど無い事が指摘されている。 宮里中学校の金城均校長は、本土復帰に関しての教材が少ない上、沖縄戦の場合は戦争の悲惨さを「戦争はダメだよね」と伝えやすいが、復帰に関しては社会背景の部分をちゃんとやっていかないといけないという難しさがあると述べた。 復帰を授業で扱う場合、基地問題など今に続くさまざまな政治課題に関連するため、配慮が必要だとも話す。 宮里中学校 金城均 校長: 沖縄市は近くに基地があって、ハーフの子どもたちも多いし、だから基地があるから悪いとかではなくて、沖縄に住んでいる同じ仲間として、これからよりよく生きるためにどうすればいいのか。そういったことを考えるきっかけになる授業になればいいなと思いますが、ただやっぱり事実を知るというのが一番大切だと思っています 金城校長は教員の負担を軽くし、学校での復帰教育を浸透させようと、2024年5月10日に社会科の先生が集まる勉強会で自身が作成した資料を配布した。 宮里中学校 金城均 校長: スライドを見せながら、「5月15日は何の日か知っている?そう復帰だよね、復帰ってなんだろ、わかっていることでいいから書いてみて」とか 写真で簡単に誰でもできるようなという形で今やっています 金城校長が作成した資料を参考に、今年初めて復帰の授業に携わるのが、2年目の新垣亮太教諭。 新垣亮太教諭: 復帰の日をどうするかは全く意識していなかったので、こうやって校長先生が(授業を)やってくれるんだったら、これで学んだことを子どもたちに伝え、知ってもらうためのきっかけにしたいと思っています 宮里中学校 金城均 校長: 本当にうれしいです。自分たちが「こんな風にできるんじゃない?」とか提案するような形であれば、(復帰の授業をする)ハードルが下がるので、やりやすいかなと。先生方は、普段なかなか忙しいので、この辺は難しいかなと思っています