「17歳で紅白めざして本当に歌手になった」…『紅白博士』が語る「昭和100年」と「昭和歌謡」
あの時代の「紅白」のドキドキ感は何だったのだろうか……
それにしても、あの時代の「紅白」のドキドキ感は何だったのだろうか。 子どもから大人までみんなが知っている歌手が集まる「紅白」は本当にその年の総決算であり、年に一度の楽しみだった。「国民的行事」と言われていたこともうなずける。小さい頃はお正月になると「ああ紅白までまだ300日以上もある」なんて悲しくなったものだ。 この「紅白のテープが私の人生を変えた」というインタビューを先日受けた。 なんと今年の「紅白歌合戦」の前番組『もうすぐ放送100年! 大みそかスペシャル』(NHK総合12時15分~17時)の中で「わたしの紅白」を放送してくれる予定になっている。どんな風になっているか私も楽しみである。 と、なれば明けて正月2日のBSテレ東『日本歌手協会 新春12時間歌謡祭』(12時~24時)では、あの時代の「紅白」を再現する気迫で構成司会をつとめる。 全部で150曲以上の昭和の歌を中心にした歌の数々だが、それこそ「第14回紅白」に初出場した倍賞千恵子や畠山みどり、歌手協会会長の田辺靖雄。今年7月に他界した園まりさんを偲んで、この年の「紅白」は三人娘で出場していた中尾ミエ、伊東ゆかりが園さんの『逢いたくて逢いたくて』のVTRに合わせて歌唱する。 「22回」に初出場した五木ひろし、小柳ルミ子も元気に顔を揃えるのに加え、今年で91才の菅原洋一や『東京のバスガール』のコロムビア・ローズの大ベテランから、今年の「紅白」同様に、やはり亡くなった西田敏行さんを偲び、盟友・武田鉄矢は『もしもピアノが弾けたなら』を歌う。川中美幸、アグネス・チャン、伍代夏子、水森かおり、若手の青山新や東京力車、鳥羽一郎・木村徹二父子も「昭和歌謡」を歌い継ぐ。 さらに昨年までNHKのアナウンサーで「紅白」の総合司会もつとめた武内陶子とは、「ご当地ソング紅白歌合戦」をくり広げるのだ。実は彼女がNHK時代にレギュラー出演していたラジオ番組『ごごカフェ』に、よくゲストで呼んでいただいていたが、お正月の一発目の放送は、ここ数年決まって「ご当地ソング紅白」という企画だった。 ふたりが紅白の各キャプテンとなり、各地の歌を音源で流しながら「紅白」で対抗するのだ。今年は彼女がNHKを退局しているため、今回の「歌謡祭」の舞台で、それもその歌を歌手がその場で歌う、まさしく「紅白」を再現してみた。どうぞ皆様、お正月も「紅白」を、あの時代を彷彿させるような「紅白」を楽しんでいただきたいのだ。 ◆来年は「昭和100年」……「昭和歌謡」の魅力 こうして「昭和歌謡」が続々と生まれ、今の若者たちも「昭和歌謡」にハマっている。どうしてなのか? それはその歌たちが、若者にとってはすべて新曲であり新鮮だからなのではないだろうか。これはネットのおかげでもあるのだ。ネットなどで当時の若かった頃の歌手が歌っている動画が、そのまま配信されていたりする。現在その歌手がたとえば60歳を過ぎていたとしても、そこに登場するのは若かりし日の姿であり歌声なのだ。そこに新鮮味と歌の力が加わり、若者にとって新たな発見になる。「いいじゃないか……」となる。 同時に同じ時代を過ごした人たちにとっては、年齢を重ね歌にコクを加えた歌手を見ることで「元気に頑張っているなあ。見習おう」と勇気を感じさせる。 今新しき年を迎える。「昭和100年」のこの年に、その年その年の事件や出来事を今一度さらい、そしてその世相の中に生まれ流行した歌たちをしっかりと整理し、それを見つめることで何かを感じたい。まさしく「温故知新」だ。昭和が100年、放送開始100年、戦後80年、そして「紅白」75回。節目の年の今だからこそ、大切なことだと私は思う。 1月半ばにはそんな思いを著した新刊が発売になる。題名はズバリ! 『歌は世につれ♪ 流行歌で振り返る 昭和100年』(笠間書院刊)。昭和元年から昭和99年となる令和6(‘24)年までを一年ずつ、歌とともに振り返る分かりやすい日本史・歌謡史なのである。乞うご期待! 文:合田道人 1979年、高校在学中に渡辺プロダクションから、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。その後、音楽番組の構成演出、司会、CD監修解説に加え、新聞、雑誌での執筆、作詩作曲、ラジオDJなど多方面で異才を発揮する。著書に『童謡の謎』『神社の謎』『昭和歌謡の謎』(祥伝社) 『怪物番組紅白歌合戦の真実』(幻冬舎) 『歳時記を歌った童謡の謎』(笠間書院)などがあり、1月には『歌は世につれ♪ 流行歌で振り返る 昭和100年』(笠間書院)を発売予定。司会を務める『日本歌手協会 新春12時間歌謡祭』が1月2日昼12時から24時までBSテレ東で放送される。12月には五木ひろしに提供した「こしの都」で日本作詩大賞審査員特別賞を受賞した。
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