「ウインカーレバーもない」車内 6年目の大型アプデ テスラ・モデル3 RWDへ試乗
走行時の洗練性は向上 好ましいミドシップ感
今回試乗したのは、シングルモーターで後輪駆動のRWDだったが、走行時の洗練性が増したことを発進直後から認識できた。空力特性が改善し、吸音ガラスが採用され、サスペンション・ブッシュも新しくなっている。とても静かで滑らかに進む。 乗り心地は硬めで、英国のように傷んだアスファルトでは揺れが小さくない。快適性や上級感では、メルセデス・ベンツCクラスなど定評の高いモデルに及ばないものの、モデル3も確実に実力を高めている。 従来どおり、ステアリングレシオは明確にクイック。高速道路では、片手でステアリングホイールを握ったまま、くしゃみはしない方が良いだろう。運転支援システムが、アシストしてくれるとはいえ。 手のひらへ伝わるフィードバックは、非常に小さい。ドライブモードがコンフォートでも、スポーツでも。 好ましい特長が、前寄りの着座位置と、中央の駆動用バッテリーにリアモーターというパッケージングが生むミドシップ感。フロントタイヤの確かなグリップ力で鋭敏に回頭し、アクセルペダルを僅かに戻すと、リア側が巻き込んでいくような挙動を楽しめる。 ただし、意のままに操れるスポーツサルーンではない。コーナリングの調整域や、姿勢制御が優れるわけではない。テールがスライドすると、すぐにスタビリティ・コントロールが介入してくる。 現在の電動サルーンで、1番のバランスを備えるのはBMW i4。後輪駆動のeドライブ40が、特に良い。
再び販売上位へ返り咲く可能性大
テールを振り回さない限り、鋭いコーナリングは可能。電気モーターならではのダイレクトなレスポンスを味わいながら、郊外の道を軽快に駆け抜けられる。ドライビング体験の充足感は低くない。 テスラは公表していないが、計測上の0-100km/h加速は5.8秒。実際、必要以上に速い。人間工学的な課題は一層深くなったといえるが、運転が楽しいことは明らか。現在のテスラでは、最もまとまりが良いと思う。 テスラは、モデル3 RWDの英国価格を3000ポンド(約56万円)も値引きした。動的能力や実用性を踏まえると、価格的な訴求力はかなり高い。よりコンパクトな電動クロスオーバーより、お手頃でもある。 加えて、欧州でもテスラ独自の急速充電施設、スーパーチャージャー・ネットワークの拡大が進んでいる。モデル3が再び販売上位へ返り咲くのは、時間の問題かもしれない。
テスラ・モデル3 RWD(英国仕様)のスペック
英国価格:3万9990ポンド(約740万円) 全長:4694mm 全幅:1850mm 全高:1443mm 最高速度:201km/h 0-100km/h加速:5.8秒 航続距離:553km 電費:-km/kWh CO2排出量:- 車両重量:1765kg パワートレイン:永久磁石同期モーター バッテリー:57.5kWh(実容量) 急速充電能力:-kW 最高出力:263ps(予想) 最大トルク:37.2kg-m(予想) ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
ジェームス・ディスデイル(執筆) 中嶋健治(翻訳)