ドローンで投降の勧告と誘導 ウクライナの新たな試みは戦争をより人道的にするか
ドローン(無人機)はウクライナで新しいタイプの戦争を生み出している。最新の意外な展開は、スピーカーとマイクを搭載したドローンがロシア軍人に近づき、武器を置くよう促す「非接触型投降」という活用法だ。応じたロシア軍人はドローンに誘導されてウクライナ側の陣地まで移動し、そこで安全に捕虜になる。ドローンへの自発的な投降は過去にも時折あったが、今回は遠隔で投降を呼びかけ、受け入れる組織的な活動のようだ。 ドローンはこれまで、この戦争の残酷な接近戦に関わってきた。非接触型投降は、ドローンが未来の戦争をより人道的なものにする可能性があることを示唆する。 ■従来型投降の危険性 1991年の湾岸戦争中、米海軍のパイオニアRQ-2Aドローンの一機が、戦艦ウィスコンシンの艦砲射撃による損害を評価するため偵察任務を行っていた。同機がクウェート市近くのファイラカ島の上空を低空で通過しようとしたところ、イラク兵ら40人が現れ、RQ-2Aに向かって投降の意思を示した。これが知られる限り、軍人がドローンなどの無人システムに投降した史上初の事例だ。 当時の報道では、武装していないドローンへの投降というのはいささか滑稽だというような取り上げられ方をした。だが、投降兵らはRQ-2Aがウィスコンシンの艦砲射撃の誘導をしていることや、RQ-2Aの飛来は次の射撃が迫っていることを示す可能性があるということを知っていた。おそらく、彼らがとった行動は賢明だった。 ウクライナでの戦争では、軍人がドローンに投降した事例がいくつか知られている。こうしたことが可能なのは、低高度でホバリングできるマビック型クワッドコプター(多くはDJI製のコンシューマー向けドローンかその類い)を双方が使用しているからだ。地上の人間はドローンが目視でき、ドローンの操縦士もカメラを通じて地上の人間がはっきり見え、武器を持っているかや投降のジェスチャーをしているかを判断できる。 近接戦闘では、敵の投降を受け入れることも危険をともなう。たとえば、ある動画では、投降を装ったロシア兵がウクライナ兵らに手榴弾を投げつけている。これは「背信行為」として戦争犯罪にあたる。投降した軍人が、敵側に警戒されて射殺されたとみられる事例も数多くあり、これも戦争犯罪だ。 投降の受け入れは、ドローンを介せばはるかに安全になる。投降した軍人を、遠隔から適切な場所に誘導し、地面に伏したり軍服を脱いだりするように指示して、武器を隠し持っていないかや敵意がないか調べることができる。こうすれば、接近にともなう危険を避けられる。 投降では双方の恐怖心が最大の障害になり得るが、ドローンはその克服に寄与する。