センバツ高校野球 専大松戸、競り勝ち８強 八回同点からの連続適時打 ／千葉
第９５回記念選抜高校野球大会第８日の２７日、専大松戸は３回戦で高知（高知）に６―４で競り勝ち、県勢として２０１９年の習志野以来のベスト８進出を果たした。同点に追いつかれた直後の八回裏に太田遥斗（３年）、広川陽大（同）の連続適時打で勝ち越し、エースの平野大地（同）が初戦に続く完投勝利を収めた。快進撃を続ける選手たちには、アルプス席から惜しみない拍手が送られた。次戦は大会第１０日第２試合（２９日午前１１時開始予定）で、広陵（広島）との準々決勝に挑む。【近森歌音、森田采花】 初戦に続いて先発のマウンドに上がったのはエースの平野。だが、守備の乱れや相手の足を絡めた攻撃の前にリズムを崩し、初回にいきなり２点を奪われた。幸先良く先制した初戦とは異なるゲーム展開に、アルプス席には不穏な空気が広がった。 悪い流れを断ち切ったのは、今大会で初めてレギュラーの座をつかんだ広川だった。二回裏、１死二塁の場面で打席に立つと、変化球をはじき返した打球は右翼のポール際に吸い込まれた。値千金の同点本塁打は、専大松戸にとっても、記念すべき甲子園での初ホームランとなった。 スタンドで応援していた母知美さん（４９）は「夢のようで信じられない。小さい時から頑張ってきたので、報われて良かった」と声を詰まらせた。兄雄大さん（２３）も「小さかった弟が大きくなったなと思う」と目を細めた。 広川の一打に動揺したのか、直後に相手がミスを連発。これに乗じて２点を勝ち越した。４点目の本塁を踏んだ上迫田優介（３年）の父智さん（５６）は「自分の力を精いっぱい出してもらいたい」と声援を送った。 八回表に同点に追いつかれたものの、ここで打線が持ち前の勝負強さを発揮した。その裏、１死一、三塁の好機を作ると、初戦で２打点を挙げて波に乗る太田がセンター前にしぶとくはじき返し、勝ち越しに成功。第１打席に本塁打を放った広川も左前打で続き、再び２点をリードした。アルプス席の応援のボルテージは最高潮に達した。 平野は４失点と苦しみながらも、最終回に意地を見せた。得意の直球を力いっぱい投げ込み、連続三振でゲームを締めくくった。父勝広さん（４４）は「今日はチーム全員でつかんだ勝利だと思う。もう一度、『一戦必勝』で頑張ってもらいたい」と話した。 試合後に専大松戸の校歌が流れると、保護者たちはスクールカラーの緑色のタオルを両手に掲げ、ナインたちの健闘をたたえた。 ◇躍進願い後輩応援 ○…専大松戸のアルプス席には、２０２１年のセンバツ初出場時にマネジャーを務めた飯高菜緒さん（２０）と刀川美怜さん（１９）も応援に駆けつけた。２年前は初戦で惜しくも敗れたが、今回はセンバツ初勝利を挙げた。２人は「あの時の悔しさを後輩たちが晴らしてくれると思う」とチームの更なる躍進を願い、声援を送っていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇流れ変えたフルスイング 専大松戸・広川陽大内野手（３年） センバツ直前にレギュラーの座を勝ち取った男が本塁打を含む２安打３打点の大暴れで、持丸修一監督の期待に応えた。「甲子園で結果に残せたことを自信にしたい」とはにかんだ。 初回にいきなり先制を許し、流れが相手に傾きかけたまま迎えた二回裏無死一塁の場面。一つ前の５番を打つ太田遥斗（３年）が珍しくバントで走者を進めた。 「何とか打って１点入れよう」。内角の変化球をフルスイングで捉えた。打った瞬間は「切れるかな」と思ったが、大きな放物線を描いた打球は、右翼ポール際に飛び込んだ。八回にも貴重な６点目の適時打を放った。 昨秋は背番号２桁の「控え選手」だった。小柄な選手が多いチームにあって、身長１６７センチはひときわ小さい。「体が小さい分、みんなより練習するしかない」。冬場は逆方向に強い当たりを飛ばすことを意識し、毎日３００球を超える打ち込みを自分に課した。練習は大舞台で実を結んだ。 好きな言葉は「小さな巨人」。「次戦もフルスイングしたい」と話す「背番号３」の背中は、不思議と大きく見えた。【近森歌音】
