少子化なのに教室が足りない…特別支援学校は話が別、児童生徒が10年で3割増える 全国で慢性的な教室不足に
鹿児島県内の小中高校で児童生徒の減少が進む一方、特別支援学校(特支)に通う児童生徒は、この10年間で約3割増と右肩上がりだ。一部の特支では、授業や実習を行う教室が不足。長時間のバス通学による心身への負担も大きな課題となっている。 【写真】グラフにすればよく分かる、特別支援学校に通う児童生徒の増え方
霧島市南部の高台にある牧之原特別支援学校。プレイルームの一部を間仕切った教室で、小学部の児童が授業を受けていた。教室の声が間仕切りを通して外へ漏れる。手狭になったプレイルームの一角には本棚も並ぶ。図書室を教室に転用したため、代わりに設けた読書コーナーだ。 「子どもたちが思い切り活動するには手狭になってしまった」。鶴田弘文校長は、慢性的な教室不足に頭を悩ます。教材庫や職員室も教室として使うため、教育相談にはパソコン室を使用。プリンターや教材は廊下に置くしかない。 児童生徒は全校で約370人。2018年度からの5年間で100人増えた。設置基準では小・中学は1学級6人、高校は8人。重複障害がある児童生徒だと3人。一般の学校より、多くの教室が必要となる。急場をしのぐため、プレハブ棟の建設が進む。4月には13教室を確保するが、来年度は30人超の入学が見込まれ、6教室ほどが埋まる恐れがある。
県内の特支に通う児童生徒は2012年の1928人から増加傾向が続き、22年には2595人に上る。全国も同様で、12年の12万9994人から22年は14万8635人に増加。慢性的な教室不足が全国各地で問題になっている。 特支の児童生徒が増える背景として、鹿児島大教育学部の肥後祥治教授(障害児教育)は「教師や保護者の障害に関する知識の深まり」と「法改正と社会の障害者観のズレ」を挙げる。 文部科学省は07年施行の改正学校教育法81条で、障害がある子どもに対し、特支や特別支援学級、通級指導など多様な場で適切な指導と支援を行うことを定めている。一方で、一般には「障害がある子は、特別な場で特別な教育を受けるものという意識が根強い」と肥後教授は指摘する。 県内の特支でも増築や改修が行われてきたが、現状に追いつかない。22年5月1日時点で、校舎面積が国が定める基準に満たなかったのは、全16校のうち牧之原と武岡台、桜丘、鹿屋の4校に上る。23年4月の鹿児島南開校で桜丘は廃止され、武岡台は改善されたが、牧之原などの過密状態は続いている。