英国決戦へ井上尚弥が異例の報道陣シャットアウト厳戒体制を取った理由とは?
真吾トレーナーも「ロドリゲスは尚と同じタイプ。若くてスピードがあって反応もいい。(実力は)五分五分と見ている」と警戒。 「どっちが先にパンチを当てるのか。いち早く対応ができるか。絶対にミスをしてはいけない、流れ、ペース争いの試合になるから、1ラウンドはめちゃくちゃ大事」とミス厳禁を指令した。 ここまでグアム合宿など2度のキャンプを敢行し、計120ラウンドのスパーリングを消化してきたが、その中で「いいのが当たった後にも集中力を持って、しっかりとガードを戻すことを意識すること」を徹底したという。 ロドリゲスは攻守のメリハリがハッキリしていて、その切れ目に隙があり、時折、ガードも開く。そこに井上の左が炸裂すると筆者は読んでいるが、「自分が見ている過去の試合通りにはこない。自分への対策をしてくる。過大評価しておく」と井上に油断はない。 もうひとつのWBSS準決勝では5階級世界王者の“レジェンド”ノニト・ドネア(フィリピン)が“伝家の宝刀”の左フック一発で衝撃KO勝利、先に決勝進出を果たしているが、「ファンとして見たけれど想定できる結果。今はロドリゲスのことしか考えていない」と多くを語らなかった。ほんの小さな心の隙さえ排除している。 2度目となる海外リングへの準備も細心だ。前回、ロスで行われた「SUPERFLY」の試合では、計量後の「リカバリーにちょっとしたミスがあり、日本でやる試合のように体が戻らなかった反省点がある」(井上)。現地でいい食材をうまく調達できなかったこともあって計量後の食事で炭水化物を満足に摂取することができず体重も戻らなかった。炭水化物はスタミナにつながるエネルギー源である。 「今回は、現地に食材を持っていって自分たちで作りながら対応する。体に入れるものは大事にしたい」 陣営は「餅、米、蕎麦、うどん」を大量に現地へ持参。今回は「炭水化物不足」にならない細心の注意を払うという。 「日本でやるわけじゃないので、その分、より慎重に調整をする。現地でメンタル、対応力を問われる。日本でやっているパフォーマンスをイギリスで出せれば最高。必ず勝利を手にして決勝へ進む。バッチリ仕上がっているし、楽しみしかない」 井上の言葉に力が入った。 平成から令和へと時代が変わった。 「ボクシング人生を終えたとき、令和に名が残るようなチャンピオンになれればいいと思う」 世界3階級を制覇している井上は、すでに平成から令和に時代を跨いで歴史に名を刻んできているが、彼には「令和に名を残すボクサー」の理想像があるという。 「試合結果、内容だけでなく、言動とか、人としてファンの人をひきつけるボクサー。ファンにちょっとずつでも影響を残せば、ボクシング人生が終わった時に、自然と名前の残るチャンピオンになるんじゃないですか」 令和の井上伝説は遠くグラスゴーの地の戦いから始まる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)