辰吉Jrが3連勝もKOできずに「ダメでした」と号泣。
元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎(45)の次男・寿以輝(19、大阪帝拳)が19日、大阪のエディオンアリーナ大阪第2競技場で行われた54.4キロ契約の4回戦で3-0の判定勝利を飾った。相手の脇田洸一(25、クラトキ)も、プロ4戦目(2勝1敗)の経験の浅いボクサーだったが、手が出ない消極的なボクシングとなり、寿以輝自身が「ダメでした。反省します」と納得のいかない試合内容となった。父は、3戦連続KO勝利だったが、早くも連続KO勝利は止まってしまうことになって試合後には悔しさのあまり号泣。それでもプロデビュー以来3連勝を父は、「判定でも勝ちは勝ち」と激励した。
KO勝利はならなかった。 「39-38」、「39-37」が2人の3-0の判定勝利にも寿以輝に笑顔はなかった。 「全然、だめでした、反省しています。倒すように練習してきているのにできなかったので。勝てたんで良かったですが……。(ジュイキコールは)力になりました。ありがとうございました」 父と違い人前では言葉が少ないタイプだが、いつもに増して試合後のインタビューにも元気がなかった。 控え室に戻ると人目を忍んで号泣した。人生で初めての涙。倒せなかった不甲斐なさを悔やむ、悔し涙だ。 父の辰吉も、よく勝って泣き、負けて泣いたが、勝負に対して激しい直情型の性格まで似ている。 ウェーブのかかった金髪で、左手を振り回して初のセミファイナルのリングに登場した寿以輝は、まずは左を上下に打ちながら冷静な立ち上がり。2ラウンドに入るとテンポをアップ。ラウンド終盤には、左のストレートから強引に連打でロープに追い込み、脇田は何度も顔をのけぞらせた。 3ラウンドは、続けてボディ攻撃から前に出るが、打ち疲れと、右のパンチをもらう場面もあって、ラウンド途中から少しペースダウン。リングサイドの父は「ジャブからプレッシャー」と声を出した。勝負は最終ラウンドへ。ジュイキコールが大きくなる中、ゴング寸前に強引にラッシュをかけて、右のクロスもヒット、おおきく、ぐらつかせはしたが、惜しくも時間切れ。「絶対に倒して勝つ」とKO宣言していたが、連続KO勝利は、ストップしてしまった。 吉井会長からは、「父と一緒でディフェンスが課題。将来を考えても打たせずに打つボクシングを身につけてもらいたい」というテーマを投げかけられていた。寿以輝自身も、その課題を意識して練習に取り組んできた。ディフェンスへの過剰意識が、ボクシングの基本である左のジャブが少ないという消極性につながったのかもしれない。それでも、アマチュア経験のない19歳のボクサーだけに、4ラウンドを戦ったのは、大きな収穫。時折、見せたパンチのパワーには、やはり非凡なものがあった。 試合後、父の丈一郎は、「モノは考えよう。4ラウンド戦えたことはいい経験になった。KOしないと勝った気にならないかもしれないが、判定でも勝ちは勝ち。次につながる。ただ、左ジャブが出ていなかった。左が出ないとステップワークにも影響してくる」と、息子の判定勝利をポジティブにとらえていた。 メインが終了後、泣き止んで冷静になった寿以輝も「ディフェンスもダメだったけど、前回のようにかっとならなかったことは良かったかな」と、前向きになっていた。 プロ2戦目は、直前に自転車で走行中に交通事故に巻き込まれるアクシデントに見舞われた。その影響もあって満足のいく調整ができず、加えてWBC世界バンタム級王者、山中慎介の防衛戦のアンダーカードに登場するという東京のボクシングファンへのお披露目も流してしまった。今回は、アクシデントはなかったが、K0を逃して号泣。吉井会長は、「アマチュア経験もなく今は経験が大事」とカリスマの息子を新人王にはエントリーさせずに、じっくりと育成する考え。第4戦目は、来年3月に予定。寿以輝は「次はKOで勝ちます」と、奮起を誓っていた。