鴨川でアボカドの生産成功 希少な国産「新たな特産品に」 安田園芸(千葉県)
地域の新たな食材として、国産アボカドを――。鴨川市滑谷でかんきつ類を栽培・出荷する安田園芸が、アボカドの生産に成功した。10年の歳月をかけ、ようやくまとまった収穫ができた果実。代表の安田耕太さん(79)は「産地の魅力として定着できるよう、安定した収穫を目指し技術を高めていきたい」と意欲を見せる。 ビタミンやミネラルが豊富で栄養価が高く、濃厚な口当たりから「森のバター」とも言われるアボカド。中南米原産のクスノキ科の果実で、輸入アボカドのほとんどは、通年で収穫できるメキシコ産だという。横浜税関によると、1988年に3370トンだった輸入量は、2000年代以降徐々に認知度が高まり、20年には24倍の約8万トンに達した。果物の輸入量では第5位と、国内でも消費が定着してきている。 安田さんは、「自分の健康のために食べたい」と、10年前に10本の苗を植え栽培をスタート。毎年少しずつ植え足し、デリケートなため枯れたものもあるが、現在は約60本を栽培している。しかし、試行錯誤を繰り返すも、昨年まではせいぜい4、5個しか実がならず、「花粉を運ぶ訪花昆虫がいないためでは」と分析。今年はミツバチの助けを借り、多くの実を付けたという。
輸入アボカドのほとんどが「ハス」という品種で、果皮が厚いため輸送に強く、収量も比較的多い。しかし、本州では収穫期が低温時期にあたるため、安田さんは国内で最も多く栽培されている「ベーコン」と「ピンカートン」を栽培。原産地では、高さが30メートルを超える大木もあるというが、温室で栽培し、枝の誘引などの技術で低樹高に育てている。 「おいしいものを食べたいという執念で、育て続けてきた」と安田さん。この日の収穫では、大きく実った実を丁寧に収穫し、籠に入れていった。実が大きく、果皮が薄いのが特徴で、20度で10日間熟成すると食べ頃に。安田さんは「クリーミーな味わいでおいしい」と笑みがこぼれた。 県暖地園芸研究所によると、国産はまだわずかで、和歌山県、愛媛県、鹿児島県などのかんきつ類の産地で栽培されている。県南でも栽培者が増えてきており、現在は10人ほどが栽培。担当者は「品種が多く、味もさまざまで植物的な面白さがあり、高値で取引されることから経営品目として農家が注目している」と話す。 安田さんは、11月上旬に約60個を収穫。今年は出荷はせず、市内のホテルのシェフや流通関係者らを招いて試食会を開き、活用方法を模索した。出席者からは「鴨川でこんなにおいしいアボカドができるとはびっくり」「シンプルにオリーブオイルと塩だけで食べるのが一番おいしい」と、今後の安定生産を期待する声が聞かれた。 安田さんは「鴨川産のアボカドを多くの人に食べてもらい、新たな特産品となるよう、これからさらに収量を増やしていきたい」と話している。 (安藤沙織)