マイナポイントが「使われすぎた」、セブン銀行の悲鳴、制度の落とし穴にはまり数10億円もの損失が発生
■失効率をめぐる誤算 問題は、大抵のポイントに有効期限が存在することだ。期限が到来して失効したポイントは、会計上、事業者の収益になる。つまり、ポイントの全額に補助金を充当すると、失効分だけ事業者が得をする。 税金で事業者が潤う事態を避けようと、マイナポイント事業の事務局は参加を希望する事業者に対して、過去数年の利用実績に基づくポイントの「失効率」を事前に提出させた。失効が見込まれる分をあらかじめ控除し、実際に利用されるであろうポイントにのみ、補助金をあてがおうとしたわけだ。
セブンカードが付与した「ナナコポイント」をめぐる損失は、この失効率をめぐる誤算にあった。 ナナコポイントにも有効期限が存在するため、セブンカードは事業への参加に先立って失効率を算出し、事務局に提出した。 第1弾では、当初の想定と、実際のポイントの使われ方との差異が小さく、損失はほとんど認識されなかった。 問題は、ポイント付与額が3倍に増えた第2弾だ。マイナポイント事業経由で付与したナナコポイントが想定以上に利用されていった結果、有効期限を迎えて失効するポイントが減り、セブンカードの収益を下押しする事態が表面化したのだ。
マイナポイント事業では前述の通り、失効率が想定通りであれば、利用されたポイントには補助金が交付されるため、事業者は損も得もしない。ところが、事務局提出時の想定よりもポイントが多く利用されると、失効に伴う収益が減る一方、補助金は提出時の失効率に基づいてしか交付されない設計になっていた。 セブンカードが算出した失効率は、普段の買い物で貯まったポイントを「散発的」に使う一般の利用者を想定していた。一方、マイナポイント事業で流入した利用者は、数千円から1万円超のポイントを「一気に」消費していった。
すると失効率の想定と実績に大幅な乖離が生じ、セブンカードの持ち出しが増えていった。関係者によれば、セブンカードは追加の補助金交付を事務局にかけあったものの、認められなかったという。 ■他の事業者でも損失発生か こうした損失は、ほかの事業者でも発生しているのだろうか。 東洋経済がマイナポイント事業に参加した各社に問い合わせたところ、ある事業者は「足元では想定よりもポイントが利用されている。ただ、有効期限はまだ到来しておらず、最終的な着地を見守りたい」と答えた。ポイントの有効期限がこれから到来する事業者は、同様の損失に見舞われる可能性がある。