【40代、50代・どうする?眼瞼下垂】まぶたのたるみと眼瞼下垂はどう違う? 治療に保険はきく? きかない?
まぶたのたるみと眼瞼下垂、見分け方は?
では、まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)と眼瞼下垂、どうやって見分ければよいのだろう? 「ポイントは、まぶたの下がり方です。まぶたのたるみは皮膚そのものが重く落ちてくる、つまり“まぶたの縁を超えて”垂れ下がるのが特徴です。目に対して、まぶたの縁の位置が変わるわけではありません。 例えば、まぶたの皮膚を指や細いもの(針金など)で持ち上げてみると、まぶたがグッと上がって縦の幅が狭くなり、縁が高い位置に上がります。これはまぶたのたるみであると判断できますね。 眼瞼下垂のほうは、黒目が隠れるほど“まぶたの縁の位置が下がる”状態を指します。同じようにまぶたの皮膚を持ち上げても、まぶたの縦幅が変わらないのが特徴です。 パッと見、まぶたのたるみは皮膚の余剰感が目立つことで老けた印象になりますが、眼瞼下垂はまぶたが下がって目が開きにくそう、眠そうな印象です。症状の現れ方では、まぶたのたるみは徐々に進行しますが、眼瞼下垂は急激に現れることもあるのです」
わかるだろうか? どちらがまぶたのたるみで、どちらが眼瞼下垂?
答え:上がたるみ、下が眼瞼下垂 眼瞼下垂かどうかの判断基準としては、以前紹介した『MRD』(第1回<【40代、50代・どうする?眼瞼下垂 】急増中の眼瞼下垂(がんけんかすい)の症状って? セルフチェックの方法を専門医が解説!>参照)がある。自分でもできるので、ぜひ試してみよう。 「とはいえ、年齢を重ねると、両方が同時に起きているケースが少なくないんです。その場合、治療はたるんだ皮膚や脂肪を切除したうえで、眼瞼下垂の手術を行うことになります。 眉下切開で余分な部分を切り取る方法や、二重のラインに沿って切除して縫い縮める方法が代表的です」 眼瞼下垂も皮膚のたるみも、重症度には個人差があり、特にふたつが合併していると判断が難しいもの。医療機関で診断してもらい、症状に合った治療法を選択することが何より大事だ。
まぶたのたるみ治療でも保険適用になる場合もある!
眼瞼下垂の治療のための手術は、眼科、形成外科、美容外科などで可能だ。ただし、まぶたのたるみとの違いや、眼瞼下垂かどうかを正確に調べるためには、専門の機器がそろっている眼科が理想的。ほかの病気の有無も的確に調べてもらえる。 眼科での検査は健康保険が適用になり、手術も1~3割負担の保険内で可能だ。ただ、保険診療が適用されるのは眼瞼下垂の改善を目的とした治療法のみで、美容目的の場合は基本的に自由診療となる。 では、まぶたのたるみにより、目が見えにくくなっている場合はどうだろう? 「先に説明したように、まぶたのたるみと眼瞼下垂は同時に起きていることが多いものです。 当院の場合、同時に起きているのであればもちろん保険適用。たるみによって視野が狭まり、日常生活に支障があるのであれば、それも保険適用としています。しかしながら、はっきり分けて考える医師もいます。例えば、眼瞼下垂症は保険適用となっても、たるみによる偽眼瞼下垂症は自由診療とするケースも多いのです。 1回目に保険診療で切開による眼瞼下垂の手術を行い、2回目に自由診療または保険診療(たるみの程度によって異なる)で、たるみに対しての手術(皮膚やたるみの切除、眉下切開など)をする。そのように、初めから2度の手術を計画する場合もあるでしょう。 当院だとほとんどの場合、保険適用で行っていますが、それも保険適用の手術でありながらも、『TKD切開法』という独自の工夫をした手術です。これは皮膚切除を加えた眼瞼下垂手術。皮膚を取りすぎるリスクを考え、皮膚の余剰分を少量だけ切除しつつ、眼瞼挙筋や挙筋腱膜の異常も治すことができます。 自由診療であれば、皮膚の切除する量をまぶたの状態に合わせて増やしたり、必要であれば眼窩脂肪などの脂肪も切除し、まぶたのたるみや重みに対して、より配慮した手術を行うことができます」 保険診療というのは、損なわれた機能の回復、病気によって引き起こされた直接的な症状を改善する目的で適用されるもの。つまり、まぶたの重み、たるんだ皮膚のかぶさりによって視野が狭くなっているのを改善する目的の手術であれば、保険適用となる可能性が高いのだ。 逆に、まぶたの重み、皮膚のかぶさりが軽度で視野の狭さが認められなければ、自由診療となってしまう。 保険診療をうたっているのに、実際にカウンセリングを受けてみたら、明確な基準や根拠もなく高額な自由診療をすすめられたという話はよくある。眼瞼下垂の治療は大部分のケースが保険適用。たるみを治したい、シワを取りたいという審美的な要素を治す手術では、基本的に保険は適用されず、自由診療での手術になる。 眼瞼下垂の手術料金は、一般的な病気やけがの治療と同じく、全国全施設一律に定められている。保険診療3割負担であれば、片眼につき約18,000~55,000円(手術方法により異なる)。自由診療の場合、料金は医療機関によってまちまちだ。よりこだわった内容の手術を受けられるが、約200,000~700,000円と高額になることが多いようだ。 手術・治療内容や費用の根拠などをしっかり把握して検討しよう。
【教えてくれたのは】 高田尚忠さん 眼科医。高田眼科(静岡県浜松市)院長、フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(愛知県名古屋市)主宰。眼科医と形成外科医の知識、豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとにファシアリリース法を考案。保険適用手術にこだわり、手がける眼瞼下垂手術は年間2000件以上。全国から患者が来院。メールでの眼瞼下垂相談も可能。 イラスト・写真/Shutterstock 取材・原文・画像制作/蓮見則子