ミドリムシが食品やジェット機の燃料に? バイオベンチャーが見据える未来
THE PAGE
理科の授業で、水の中の微生物「ミドリムシ」を顕微鏡で観察した経験のある人もいるだろう。バイオベンチャーの「ユーグレナ」は、このミドリムシを使った機能性食品を製造・販売する会社として急成長を遂げている。しかも、ミドリムシは食品だけではなく、ジェット機の燃料にもなるのだという。同社の出雲充社長に、事業の可能性について話を聞いた。
ミドリムシはどんな味?
「皆さんに、美味しくいただけるものになっております」と出雲充社長が差し出してくれた目の前のグラスに入っているのは、ミドリムシをベースにした健康飲料「ユーグレナ・ファームの緑汁」。緑汁というだけあって濃い緑色をしている。口に含むと、抹茶のような味わいが感じられた。 ミドリムシは、体長約0.05mmほどの微生物で、「虫」ではなく、ワカメや昆布と同じ藻の一種。植物と動物の両方の特徴を持っており、光合成を行えるとともに、伸び縮みして動くこともできる。ビタミン類14種類、ミネラル9種類、アミノ酸18種類(必須アミノ酸全9種類を含む)、不飽和脂肪酸11種類など計59種類の栄養素を持っているほか、光合成により光と水、二酸化炭素から有機化合物や酸素を作る生産効率も高いという。
栄養失調に苦しむ子どもたちを救う
「ユーグレナ」は2005年8月に設立。社名の「ユーグレナ」は、ミドリムシの学名だ。東京大学の1年生だった1998年、バングラデシュを訪れた出雲社長は、現地の食糧事情を目の当たりにした。現地では食料こそ足りていたものの、肝心の栄養が偏っていた。「彼らが食べるカレーを見ると、野菜がほとんど入っていなかった。栄養失調で困っていたのです」。この体験が会社設立の原動力となった。
設立から10年。2006年1月からの2年間は受注がゼロで、倒産を考えるところまで追い詰められたこともあったが、近年は業績を順調に拡大。昨年から今年にかけて一気にブレークした。2015年9月期の決算では売上高が前年比約2倍増、このうちミドリムシを使った機能性食品(直販)の売上高は同3倍増となった。 2014年4月からは、バングラデシュを含めた世界中の栄養失調に苦しむ子どもたちにユーグレナクッキーを配布する「ユーグレナGENKIプログラム」を開始。プログラム対象製品の売り上げの一部を用いて、現地のNGOが運営する小学校の給食としてユーグレナクッキーを配布するもので、同年4月からの1年間で、毎日2000人の児童に約50万食を配布した。