掛布が語る 阪神「31」の後継者は?
実は、3年目が終わったオフに球団から「3番をつけないか」と打診をもらった。2年連続で3割をクリア。球団も認めてくれたのだろう。当時、上田卓三さん(1976年ー1977年に阪神に在籍)が、「3」をつけていたが、ちょうど南海へトレードされて空き番となったのである。 しかし、私は、「この31を大切にして『31番と言えば掛布だ』と言われるような選手になりたい」と、その申し出を断った。もう31番に愛着が生まれていたし、背番号「3」はライバル球団である巨人の長嶋茂雄さんの印象が強すぎた。 私が、「31」にこだわった理由に長嶋茂雄さんの「3」と王貞治さんの「1」を合わせた数字だという話も流れたらしい。私のポジションがサードで左バッターで本塁打王を狙っていたので、なおさら、長嶋+王という背番号伝説が、それらしく一人歩きしていたのだろう。だが、それは、あくまでも後付けの理由で、私にそういう意識はなかったのである。 少し昔話が長くなったが、実は、先日、球団幹部の方と、その背番号「31」の話になった。 「今後、掛布が『よし!』という選手が出てきたら、その時にその選手に31番をつけさせるから。掛布が決めてくれ! それまでは31番は欠番扱いにする」 そう言ってくれた。ありがたい話である。ここまで、31番の後継者が出てこなかった理由は、色々考えられる。「31」を背負った選手が、少し深刻に受け止めすぎていたのではないかとも思う。もっと、ちゃらんぽらんでいい。掛布の過去など、放っぽりだして野球を楽しむぐらいの気持ちで背負えばいいのだ。 では、いつ、そういう選手が出てくるのだろう。私は、この秋からGM付育成&打撃コーディネイターとして若い選手を育てる仕事をスタートしている。その中から「31」の後継者が出てきてくれれば最高である。 「早く出てこいや!」。そんな気持ちだ。個人的には「31」という背番号は左打者に似合う番号だとは思っているのだが……。 (文責・掛布雅之/阪神GM付育成&打撃コーディネイター、野球評論家/構成・本郷陽一)