「何もしてませんよね」屈辱的な言葉とともに告げられた2軍監督 ソフトバンク小久保監督がそれでも貫いた愛【#好球筆打】
雌伏の時を経て、鷹が雄々しく舞い上がった。2位日本ハムに10ゲーム以上の差をつけての独走V。チームを率いた小久保監督にとっては就任1年目での偉業となったが、ここまでは決して順風満帆だったわけではない。 ■松葉杖でグラウンドへ…近藤が小久保監督と熱い抱擁【写真】 工藤政権最後の年となった2021年、ヘッドコーチとして再び古巣のユニホームに袖を通した。次期監督候補としての招聘(しょうへい)だったが、思うように工藤監督をサポートできなかった。 チームは8年ぶりにBクラスでシーズンを終了。相手がベテランであろうと、間違ったことは正しく指摘する指導法は強い反発も招いた。「ヘッドを1軍から外してください」。一人のベテラン野手が、球団に異例の要望を出すほど溝は深いものとなっていた。 シーズン後、球団からは2軍監督としての再出発を命じられた。4位という結果には責任を感じていたが、チームを思っての働きすら認められなかった。「今年一年は何もしてませんよね」。屈辱的な言葉も突きつけられ、正直、心は揺れた。 ただ、誰よりも強いチーム愛が受諾を決意させた。「緩み切った今のチームを根本から変えないと、このチームは本当に終わる。間違っていることを正すのが自分の仕事」。根底にあったのは、ここ数年で完全に失った「真に強いホークス」を取り戻すことだった。 若手主体の2軍監督時代は、野球以前に日々の意識改革から着手した。「げた箱の靴の乱れがなくなったんよ」。そう言って喜ぶ姿を何度も見た。勝利の女神は細部に宿る―。「小久保の教え」を受けた多くの若手が今季、晴れて1軍監督に昇格した指揮官の下でプロ初安打に初本塁打、初勝利と次々記録したのも偶然ではないだろう。主力の働きは当然として、4年ぶりのリーグ制覇を下支えしたのは、そんな若い力の集合体だった。 「隙を見せるな」「言い訳するな」。緩み、慢心を嫌うスタイルで近寄りがたい空気をまとうが、裏では「若い子は一つの成功体験でグンと伸びる。それを見るのが楽しい」と目尻を下げる。実はこの優しさこそが本来の姿だ。そんな「仮面のリーダー」に導かれての頂点返り咲き。次に目指すは日本一の頂だ。(石田泰隆) 【#OTTOホークス優勝特集】 【おすすめ記事 優勝特集】 女性関係の不祥事で大批判…山川穂高を支えた妻の一言、小久保監督の長男&長女が父に贈る言葉、秋山幸二さんが語る小久保采配など西スポWEB OTTO!が総力取材したとっておき優勝記事がたっぷりです。 ▼下記の関連記事から▼
西日本新聞社