配達14万円分ドタキャン、広島市内の料理店被害 別の店でも 共通点は「アワビの大量発注」
マーボー豆腐10皿、チンジャオロース10皿…。広島市内の2カ所の飲食店で8日、大口の配達注文や貸し切り予約を直前にキャンセルされる被害があった。いずれも中国語での注文で男性とみられ、アワビを大量に調達するよう要求されたことが共通している。そのうち1店では約14万円分の実害を受け、県警が偽計業務妨害の疑いもあるとみて捜査している。店主は「怒りを通り越して喪失感」と肩を落としている。 【写真】教員を名乗る男とのLINEのやりとりや注文を受けて作った料理 「同郷のよしみと思ったのに…。次の予約も疑心暗鬼になってしまう」。中区の基町ショッピングセンターの一角にある「中華料理居酒屋四季」。店主の上條俊偉さん(38)は落胆する。俳優の鈴木亮平さんやお笑いコンビの千鳥も訪れたことのある人気店だ。 注文を受けたのは7日午後2時ごろ。中国語で教員を名乗る人物から「30~40人分を配達できるか」と電話があった。すぐに交流サイトLINE(ライン)でのやりとりを求められ、市内の私立中高に8日夜に持ってくるよう言われた。 翌朝には「さらに10人分増やしたい」「アワビの缶詰を30箱配りたい」と依頼され、この人物が指定した缶詰の製造業者にラインして調達するよう指示を受けた。業者にラインでアワビの値段を問い合わせると「1箱5万円」との返答。断ると、この人物ともその業者とも、やりとりは途絶えた。 不審に思ったがランチ営業も休業し、マーボー豆腐や唐揚げ、アヒルの血とモツの煮込みなど12品約110点を箱詰めした。しかし、この人物に電話はつながらない。注文先の学校に電話すると「そんな教員はいない」。伝票の金額14万1700円を前に、力が抜けた。料理は無駄にしないよう、近所の店や知人に無料で配った。 「四季」に最初の電話注文があった7日午後1時半ごろには、西区にある「台湾家庭料理 黄さんの家」にも台湾の教員を名乗る人物から電話があった。台湾や韓国の学生を率いて「8日に50人で行きたい」という内容だった。不審に思ったがコースの予約を受け付け、翌日夜の営業は貸し切りにした。翌日にはやはり、アワビを大量注文するよう依頼があった。 断るとやりとりはストップ。予約の時間に50人は現れなかった。岩元佳美代表は「怪しかったので最小限の用意しかしなかったけど、来店を断った他のお客さんに申し訳ない。『なぜ』という疑問が募る」。両店は県警に被害を届け出ている。
中国新聞社