クロダイのうまみや塩味を数値化 岡山県水産研究所 季節的な変化調査
岡山県水産研究所(岡山県瀬戸内市牛窓町鹿忍)は、地魚・クロダイ(チヌ)のおいしさの季節的な変化を数値化した。人間の舌を再現した味覚センサーを活用。おおむね10~2月の数値が高く、改めて旬を同期間と結論付けた。クロダイは養殖魚などに押されて食卓から遠のいており、研究所は調査結果や調理法をホームページ(HP)などで公表し、消費を呼びかけている。 2022年5月~23年4月に岡山県倉敷市沖の水島灘で漁獲されたクロダイを毎月9匹ずつミンチ状にしてセンサーにかけ、うまみや塩味(塩分を中心とした味の濃さ)について月別の差を相対評価した。
最も数値が低い月を0とした場合の平均スコアは、うまみが1月1・13▽12月1・08▽2月0・79、塩味が12月5・78▽11月3・15▽2月3・00―の順に高かった。10~2月はいずれの月もうまみ、塩味の両方で上位6番目までに入った。 さらに旬でなくてもおいしく食べてもらおうと、6月に取れた個体を「蒸す」「ゆでる」「焼く」「レンジで加熱」の四つの方法で調理し、センサーで計測。いずれも後味のうまみや塩味が増し、生食を0とした場合、最高はうまみが「焼く」の6・5、塩味が「蒸す」の1・6だった。 1を超えるとはっきりと味の違いが分かるとされ、研究所は「大きな差が出た」と評価。結果をHPのほか、パンフレットにもまとめてイベントなどで配っている。
センサーは地魚を科学的に調査して消費者に親しみを感じてもらおうと15年度に導入。これまでにガザミやヒラの分析も手がけてきた。クロダイは近年価格が低迷し、22年の県内漁獲量は89トンと10年前から3割減少。一方で養殖ノリやカキを食い荒らしており、対策として消費拡大が重視されている。 研究所は「岡山ではかつて高級魚として親しまれたが、近年は存在感が低下気味。旬の時季は魚本来の味を楽しめる刺し身などで、シーズン外では加熱調理して食べてほしい」としている。